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メーカー(住宅・建築) / インフラ(建設) / メーカー(インテリア・建材・住宅設備)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
お客様の信頼に応え“山の上の一軒家”を無事完成させた木造注文建築営業のプロ。
営業・販売系−営業(個人・新規開拓が中心)
三島展示場/店長
鷹野 浩三 (32歳) Kozo Takano
入社9年目 / 明治大学 理工学部 建築学科 出身

プロフィール
入社後、約1カ月半の研修を経て、静岡県東部と伊豆半島を担当する沼津の工事事務所へ配属。約2年半、現場監督を任された後、三島展示場へ異動。住まいを建てたいという来場者に対し、住まいづくりのアドバイスをするのが主な仕事だ。2006年7月には全社でも数少ない20代の店長となり、12人のメンバーを引っ張る。

プロローグ
入社3年目の秋、鷹野は現場監督から営業への異動を言い渡される。営業というと「強く売り込まなければならないのではないか」というイメージが強く、あまり気乗りがしなかった。がむしゃらに仕事をしていた鷹野は、営業より現場監督のほうが向いているのではないかとさえ思っていた。

しかし、それは勘違いだった。いざ自分が営業になってみると、その仕事の幅は想像以上であることに気付いたのだ。展示場で案内することなど仕事のほんの一部。展示場や写真ではわからない部分を現場で見てもらうべくお客様をお連れしたり、職人と話をしたり、さらには住宅ローンの借り入れ、相続や税金に関する相談に応じたり。こうした知識が一朝一夕で身に付くはずがなく、鷹野は銀行や税務署などへ足を運んで勉強を重ねた。

鷹野は売るだけの営業ではないことにやりがいを感じていた。何より「お客様がこれほど大変な思いをして、うちでやろうと決めてくれているんだ」と実感できたことが、鷹野にとって最大の収穫だった。営業になって2年目、仕事に慣れ自信もついてきた頃、鷹野は山の上の一軒家に住む50代の夫婦から建築を依頼される。しかし張り切る鷹野に、難題が降りかかる。

築35年、山の上にある一軒家。 1
2003年、展示場のある静岡県三島市の隣、伊豆の国市に住む50代半ばの夫婦が展示場を訪れた。このとき応対したのが鷹野だった。「話しやすい、感じのいいご夫婦だな」。それが鷹野の第一印象だった。モデルルームを案内しながら話を聞くと、夫婦の住まいは山の上にある一軒家で、築35年。白蟻や耐震面が心配で、「いずれは自宅を新築したい」と考えているようだった。鷹野は夫婦の様子から、今日は無理に売り込まないことにして、質問されたことのみに答えた。初対面ながら波長が合い、後は世間話が多かった。

「まずは一度お宅を見せてください」と約束を取り付け、翌日の夜、早速夫婦の住まいへと車を走らせた。会話の中で、「うちは山の上にあって、まわりには一軒も家がない」と聞いていたが、鷹野は半信半疑だった。しかし、夜中の運転が怖いくらいの山道を上り、訪ねてみると、たしかに山の上の一軒家。真っ暗な中にポツンと明かりが見え、「よく来たね。これでも何もないところからここまでになったのよ」と出迎えてくれた。この日は周辺の状況を教えてもらったり、傷みがある箇所を見せてもらったりした。

「俺が死ぬ家を建ててくれ」。 2
鷹野は「この間の訪問で現地のことはだいたいわかった。今度はお2人の要望を聞く番だ」と、夫婦が揃っている日に時間を取ってもらい、再び訪ねた。展示場で実物を目にしたことで、夫婦は「いずれ」ではなく、「今すぐ」家を建てる気になっていた。

一通り要望を聞き出し、その後たわいもない話をしているときだ。ご主人が鷹野の目を真っすぐに見て、こう言った。「俺が死ぬ家を建ててくれ」――営業になって約1年、鷹野がお客様の口からこんな言葉を聞くのは初めて。すぐに言葉が出てこなかった。「この家はそういう思いでつくる家なんだ。そんな家を頼みたいんだけど、大丈夫か?」。鷹野はすぐに「頑張ります!」と答えた。ご主人のこの一言が鷹野をさらにやる気にさせ、「言われてみれば全てのお客様がそうなのかもしれない」という気付きまで与えてくれた。

地盤調査は鷹野自らが行った。間取りも決まり、いよいよ本格的に家づくりが始められる準備が整った。鷹野は夫婦の喜ぶ顔を思い浮かべ、心を躍らせていた。しかし、喜ぶのはまだ早かった。役所へ建築する旨の申請をすると、それが認められなかったのだ。

「道路どころか、この家さえも存在しない」とは? 3
家を建築するにあたっては敷地に道路が接していないと建てられない。だが、役所の管理する正式な書面には、道路どころか、この家さえも存在していないことになっていた。家を建てるには、道路や家の存在を証明しなければならない。しかし、この家まで続く道路はさまざまな人の土地をまたいでできていたため、それぞれの地権者から「たしかに道路である」旨の了解を、正式な文書で取る必要があった。それらは不可能にさえ思えた。

しかし、申請が通らなければ家を建てられない。30数年前、夫婦は苦労してこの山を切り開き、家を建てた。それだけにこの土地への愛着は人一倍。絶対に離れたくないと口にするのをよく聞いていた鷹野は、「それでもやるしかない」と心に誓った。

鷹野は、昔から家が建っていたことを証明するため、昔の航空写真や、夫婦の子供たちが幼少時に撮影した家の前での記念写真、たまたまとってあった当時の公共料金の支払明細などを役所へ提出した。その中の1枚に、家を建てる前の山の写真を発見する。夫婦のこれまでの苦労を実感し、もう一度気を引き締めた。

「あいつだったらきっと何とかしてくれる」――その信頼に応えたい。 4
鷹野は夫婦と一緒に、道路の地権者四軒ほどに「たしかに道路である」旨の了解をしてくれるよう、依頼をしてまわった。案の定許諾を得るには時間がかかったが、約半年の交渉の末、全ての地権者から了解を得る。何しろ稀なケースだったため、役所からも追加であれもこれも提出するように言われ、鷹野はその度に奔走した。それでもあきらめずに頑張れたのは、夫婦の信頼があったからだ。「もうダメかもしれない。でもあいつだったらきっと何とかしてくれる」。その信頼に応えたかった。

そして、申請から半年。ついに役所の許可がおりた。「これでやっと家を建ててあげられる」。鷹野はほっと息をついた。その後の工事は、それまでの出来事が嘘のように順調に進み、鷹野は夢が着実に形を成していく過程を夫婦と堪能した。現場周辺で筍を掘ったり、ゴルフをしたりと家族同然の付き合いを重ねる。そして、2006年の春、ついに“山の上の一軒家”は完成した。夫婦の笑顔に、鷹野の胸にも熱い思いがこみ上げる。そして、この達成感を得られたことに誇りを感じていた。

エピローグ
今回の経験で、鷹野は「お客様の信頼に応えようと思って動けば何とかなることを学んだ」と言うが、そもそもそうした厚い信頼を得られたのも「嘘を言わない」 「デメリットも正直に話す」といった真摯な姿勢があればこそ。そんな鷹野には、仕事をしていたお陰で得られた誇らしい思い出がたくさんある。「暑中見舞いを出したら、奥さんからすぐに電話がかかってきて、『大工さんじゃなくて、あんたのおかげで家が建ったんだからね』と言ってくれました」。こうしたお客様と再び出会うべく、今日も展示場に立ち、お客様を笑顔で出迎えている。
引渡しの日は、満開の桜の下、親戚や現場監督、大工などが集まっての盛大な披露パーティーとなった。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学時代の約3年半、焼肉店のアルバイトで厨房やフロアスタッフをして、多くの人と接することに慣れた。それまでは誰とでも気楽に話す方ではなかったが、アルバイトのおかげで、それが自然にできるようになった。今も展示場に足を運んでくれたお客様に「ぜひ見ていってください」とスッと声を掛けられる。
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