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メーカー(住宅・建築) / インフラ(建設) / メーカー(インテリア・建材・住宅設備)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
「町の銭湯」の新たなスタートを支えた、木造住宅設計のプロ。
技術系−建築・土木技術者
上尾展示場 設計課
佐藤 達也 (31歳) Tatsuya Sato
入社8年目 / 芝浦工業大学 工学部 建築工学科 出身

プロフィール
学生時代、研究室で「木の素晴らしさ」を学んだことがきっかけとなり、木造建築の設計士を目指すように。2001年4月入社。入社後、約2年間は営業職に従事。営業時代に建築士の資格を取得し、2003年4月からは設計職として活躍中である。

プロローグ
「今日もありがとね」。夕暮れ時。とある町の銭湯の番台から、威勢の良い老人の声が聞こえてくる。その声につられるかのように、地元の人々が次々と訪れ始めた。80歳も目前のこの老人は、この土地で長年銭湯の火を守り続けてきた地元で親しまれている“番頭さん”だ。数十年変わらない姿勢で、今日も番台に座っている。ただ、一つ違うのは一条工務店が建てた銭湯であること。その姿を、佐藤は笑顔で眺めていた――。

2003年4月。「1階が銭湯の住居を建てたいのだが、お願いできないだろうか」。老人からの問い合わせに、一条工務店は全社を挙げて動き出した。正直、銭湯の設計実績はほとんどなかった。「引き受けることが逆にお客様にご迷惑になってはいけない」。入念な打合せ、審議の結果、半年後、ようやく一条工務店が建築することに。同時に設計担当が佐藤に決まった。「期待しているから任せるんだぞ。これもいい経験だ、思いっきりがんばれ」。前例の少ない案件。それに携わるのは、異動してまだ数ヶ月の新米の自分。佐藤が不安に襲われるのも無理はない。だが老人にとって、そんな自分でもプロの設計士。佐藤はベストを尽くすことを心に誓った。

番頭としての誇りを、形にしてあげたい。 1
設計の本格的な打合せが始まったのは12月のこと。そこで初めて、佐藤は老人と対面した。「マンションの開発が始まってね、立ち退くことになったんだよ。私も年老いているし、銭湯は畳もうかとも思ったんだけどね…」。老人は奥様との2人暮らし。開発に伴って、近くのマンションに住居を用意してもらえる予定だった。「毎日来てくれる人もいてね。どうしても、この町から銭湯の火を消すわけにはいかないんだよ」。老人はそれまで銭湯を開いていた場所のすぐそばに、新たな土地を購入した。そこに新しい銭湯と住居を建てるのだ。

佐藤は老人の決心に、感銘を受けていた。「理想を形にしてあげたい…」。プラン作りには、お施主様とのイメージの共有が必要不可欠。そのためには、銭湯への理解を深める必要がある。佐藤はインターネットや書籍などで、銭湯の構造や内装に関して調べ尽くし、それをもとに老人の要望を図面に落とし込んでいった。そうしてできた初回プランを老人に見せた。老人は図面をじっくり見つめた後に、佐藤にこう言った。「佐藤さん、ちょっと付き合ってもらえないかな」。

“見て、感じる”ことが重要。 2
営業担当も含めて3人で向かった先は、老人の友人が経営する銭湯。「実際に見てみないとね」。そういって老人は暖簾をくぐり、中へと進んでいった。実は、佐藤は一度も銭湯に行ったことがなかった。佐藤のプランに欠けていたもの、それはリアリティだった。「銭湯のイメージって“寒色系のタイルに富士山”だろ?でも違うんだ。ここみたいなのを頼むよ」。確かに暖色系の色彩で統一された内装は、明るくて居心地が良い。実際に見て、感じたことは、佐藤が想像していたものと全く違っていた。佐藤は脱衣室や談話室に至るまで、その目でありったけの情景を記憶したいと思った。

老人は“銭湯ならでは”の知識も教えてくれた。銭湯の天井は水滴が垂れないように、傾斜をつけなければならない。脱衣室から浴室への扉は、閉め忘れても元に戻る吊り扉にしておくこと…。少しずつ専門知識を蓄えながら、老人の理想のプランを仕上げていった。「木造2階建て。1階は銭湯。浴室には2階分の吹き抜け――」。特に吹き抜けには、老人の強いこだわりがあった。より快適な銭湯を求める老人の希望が、最大限プランに反映されていた。

こうして半年間の打合せ期間を経て2004年6月、着工の運びとなった。

“住まう”ことを重視したプランに変更する。 3
そんなある日、営業担当を通じて佐藤のもとへ連絡が入った。「お客様が倒れられた。着工はしばらく凍結だ」。つい先日、建築許可が下り、工場に加工依頼を済ませたばかりだった。直ちに工場に連絡を入れた。佐藤は老人の病状を案じると同時に、「老人の夢が、このまま実現せずに終わってしまうのではないか…」という不安に駆られていた。だが佐藤にできることは、老人の健康を祈り続けることのみ。佐藤は老人の「元気になったよ」という声を、心から待ち望んでいた。

「佐藤さん、迷惑かけてすまなかった」。連絡が入ったのは、それから数ヶ月後。久しぶりに会う老人は少し痩せて、小さく見えた。「申し訳ないが、少しプランを変えてもらえないだろうか…」。病気をきっかけに、もともと不自由だった老人の足が、さらに悪化しているように見えた。老人の話では、銭湯に対する気持ちに変わりはない。しかし、今の“銭湯重視”のプランでは近い将来自分の生活に支障を来たす。老人は、“安全・快適に住まう”ことに少し比重をおいたプランへの変更を求めた。もちろん佐藤は快諾。再度プランニングが行なわれた結果、浴室の吹き抜けは、広い住空間や、将来的なエレベータースペースの計画へと変更された。通常、木造2階建ての戸建住宅の場合、5枚程度で納まるはずの設計図。老人のプランが完成した時、その数は30枚にも及んでいた。

「懲りずによく付き合ってくれた」。 4
いよいよ着工。しかし、工期は通常より2ヶ月短縮された70坪を4ヶ月で仕上げるという非常にタイトな計画になっていた。工期が長引くほど、これまで銭湯に通い続けてくれたお客様は離れてしまう。そこにも老人の強い希望が込められていた。急いで工事を進めるために、佐藤は現場へ足繁く通った。

「どうせ毎日現場に来るのなら、ここで仕事すればいいのに」と、職人から言われるような毎日。経験が浅い佐藤の図面には、“納まり”の悪い箇所が多々見られた。設計上は問題なくても、施工がしづらいのだ。他の案件に携わりながらも、時間を見つけては現場へ通う。こうして4ヶ月は、早足で過ぎていった。

竣工を間近に控えた最終検査の日。銭湯の浴室、脱衣室、そして2階の住居部分…一つひとつの部屋を、老人とともに回る。全ての部屋を回りきった後、老人は一言つぶやいた。「懲りずによく付き合ってくれた」。それは佐藤への最高の褒め言葉だった。季節はもう春の様相。佐藤の心も穏やかに晴れ渡っていた。

エピローグ
2005年春。銭湯は新しいスタートを切った。2年という長期にわたる休業となってしまったが、再開後、以前からのお客様はすぐに戻ってきた。そんなお客様の期待を裏切らない、いい仕事ができたと、佐藤は自負している。

「今でも、たまにお店の前を通ります。中には恥ずかしくて入れないんですけどね」。佐藤は繁盛している銭湯の様子を見ながら、この案件でのさまざまな苦労を思い出す。「銭湯併用住宅という特殊な案件を担当することで、一気に10棟分くらいの経験が積めたような気がします。お引渡しが出来た時、ひと回り成長できた実感がありましたね」。設計士として次なるステップを目指し、佐藤は前進を続ける。
「でしたら…この瓦はいかがでしょうか?」。お客様の要望の本質を見抜けるのが、デキル設計士。幅広い建築知識の追求が必要だ。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
お客様との親密なコミュニケーションが、理想の住まいを創る第一歩。佐藤はその術を大学時代のアルバイトで身につけた。スキー場のリフト員や居酒屋のホールなどの仕事を通じ、お客様との触れ合いに自信をつけた佐藤。時にお客様を楽しい会話で盛り上げることが求められるサービス業の経験は、今の仕事にも活かされている。
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