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メーカー(化学・ゴム) / メーカー(自動車・輸送機器)
最終更新日: 2007/10/01
(マークの説明) 正社員 3年増益 株式公開
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プロの仕事研究
画期的な特殊素材の研究を推進し、環境に優しい新製品を完成させたタイヤ開発のプロ。
技術系−応用研究・技術開発
研究本部 研究部 第三研究グループ
亀田 憲史 (29歳) Norifumi Kameda
入社4年目 / 東北大学大学院 工学研究科 バイオロボティクス専攻 出身

プロフィール
大学時代にはカートレースへ参戦するほどのクルマ好きだった。就職も自動車業界を目指し、若手にも大きなチャンスを与えてくれると感じた横浜ゴムへ入社。入社以降は研究本部に所属し、タイヤの空気漏れを抑制する『インナーライナー』に使用する新素材の研究開発を担当。関わった新製品は、すでに世に送り出されている。

プロローグ
2007年の夏、横浜ゴムは満を持して画期的なタイヤを発売した。その名は『DNA dB スーパー E-スペック』。原材料の80%に非石油資源が使用され、CO2の排出量削減に貢献する――“eco MOTION”と呼ばれる同社の環境貢献活動を象徴する新商品だ。天然材料の使用の他、特筆すべきが燃費向上をもたらすタイヤ特性の強化である。タイヤの空気漏れを抑制する『インナーライナー』に、独自に開発した『空気透過抑制フィルム』を採用。既存のタイヤよりも空気圧の保持能力が高まり、燃費だけでなく走行時の安定感も一層増した。

このインナーライナーの研究・開発を推進した人物が、亀田憲史。この若手エンジニアの活躍があってこそ、量産化を実現できたと言っても過言ではない。もちろん、それまでの道は果てしなかった。大学院では細胞の研究に携わり、言わば畑違い。一から専門知識を吸収した上で、素材研究に没頭した。時には数百本のテストタイヤを解析し、数ミクロンのキズを見つけてはその原因を探っていった。迷路をさまようかのごとく、壁に当たっては次の道を歩むことの繰り返し。まさしく一流のタイヤ開発者になるための登竜門だった。

新素材の全容を知り、モチベーションが高まる。 1
2005年の初夏、新人研修を終えた亀田は研究本部の一員となった。所属した第三研究グループでは、先輩エンジニアが重要な研究を推進していた。タイヤのメイン素材となるゴムに関する内容ではなかった。『空気透過抑制フィルム』と呼ばれる、世界的にも斬新な部材の研究・開発だという。亀田はどちらの知識も皆無に等しかった。一瞬、疑問符を浮かべたものの、すぐに好奇心へと変わった。

抑制フィルムはタイヤの内側に装着される『インナーライナー』として、使用されるものだった。通常、タイヤはパンクなどの大きな要因がなくとも、日々空気はゴムから浸透して抜け、空気圧が減少する。それを最小限で食い止めるのが、インナーライナーの役割。つまり、燃費の悪化を防ぐ効果もある。そして、開発中の抑制フィルムはゴム素材のしなやかさを持ち、そこへ空気の浸透速度を遅らせるプラスチック素材を配合したもの。空気漏れの抑制効果を一層高めるだけでなく、従来の5分の1という薄さのインナーライナーが製造可能になる。ほんの数ミリの違いとは言え、車両重量の軽量化に貢献できるというメリットもあった。亀田はその全容を聞き、気持ちの高ぶりを感じた。

新人という甘えが許されない毎日を過ごす。 2
入社1年目の新人とは言え、亀田には即戦力としての活躍が期待されていた。日々の実務を学ぶと同時に、先輩が携わる研究案件に参加した。研究施設に足を踏み入れると、そこには数百本のタイヤがズラリと並べられていた。実は、新素材のインナーライナーを装着したタイヤはすでに実用化され、世界各地の拠点でテストが実施されていた。異なる温度や湿度、路面条件などを持つ各所で試乗し、新しいタイヤに求められる仕様を満たすか否かを確認する。使用済みタイヤの解析が、亀田に与えられた最初の仕事だった。

先輩の手ほどきを受けながら、慎重に作業を進めた。まずはタイヤの一部を切り取り、それを顕微鏡で覗いていく。すると、外観から見るだけではわからない、微少なキズが見えてきた。その大きさは数ミクロン。先輩に聞けば原因がわかるキズもあれば、理解不能のキズも見つかった。新素材だからこそ、新たな発見はこの段階でも続いていた。そこで原因不明のキズが見つかると、切り取ったタイヤを研究本部内の材料開発部門へ送り、詳細な分析を依頼した。タイヤ性能はもちろん、“安全”の確保を最優先するために、どんな変化も見逃してはならなかった。

インナーライナー開発の主担当に昇格する。 3
従来のタイヤ開発で、数百本ものテストタイヤを検証するようなケースはなかった。しかし、空気透過抑制フィルムは未知の素材であり、どんなトラブルにも対応できるだけのデータを蓄積する必要があった。亀田はひたすらタイヤの外観をチェックし、切り取っては顕微鏡を覗いた。地道な作業だが、必ず新しい収穫があった。亀田自身で仮説をたて、材料開発チームと妥当性を検討し、要因実験等を実施することで真因を特定した。そして、材料開発チームによる材料仕様変更やタイヤ設計チームによる製造方式改善をリードした。

気づけば、早くも1年目が終わろうとしていた。ようやくすべての仕事を理解できた頃、師匠とも言える先輩エンジニアが設計部門へ異動した。これでインナーライナーの開発主担当は亀田に受け継がれ、さらに大きな責任を担い、仕事の幅も広げられた。それでも、冷静さは失わなかった。1年目の地道な解析作業などを通じて、開発エンジニアとしての基礎体力は養っていた。不安よりも意欲が満ち溢れ、次の開発プロセスへと移行した。最も肝心な量産化に向けた準備。ここからはタイヤを製造する工場側との連携も大切になり、研究現場と工場の往復という忙しい日々が始まった。

最後のハードルとなる量産化を実現。 4
タイヤは1枚の厚いゴムだけでは構成されず、ゴムや金属部品、さらにはインナーライナーといった特殊素材を何層にも貼り合わせた構造になっている。そして、亀田が関わるインナーライナーを装着する他の部材も、従来では希な天然のゴム素材などを使用しており、製造工程で各部材をマッチングさせる際も難しいと容易に予想できた。そこで実車評価用タイヤの試作を手始めに、量産化に向けた準備を進めた。タイヤ製造も実戦では初めての体験。工場側のエンジニアの協力なしには、ことが進まなかった。互いのコミュニケーションを良好に保ち、時には素材開発者からの意見を取り入れてもらう。抑制フィルムの特性を的確に伝える一方、装着での問題点が浮上すれば、研究施設に戻って、素材自体の解析に力を注いだ。さらにこの段階で、亀田は抑制フィルムが持つ別の特性にも着目した。タイヤの酸化劣化を防ぐ特性があり、それが発揮されているのかも、素材開発と連携を取って確認する。そうした試行錯誤を繰り返した後に、タイヤは量産から市販化への道を歩んでいった。

迎えるは2007年の夏、エコタイヤ「DNA」シリーズのフラッグシップタイヤとして、新商品は世に送り出されていった。

エピローグ
量産化が始まると同時に、亀田は新たなインナーライナー用の素材研究にも着手した。また、空気透過抑制フィルムについては、米国の化学品メーカーとコラボレートする形で、タイヤ部材としてのグローバルな供給の実現に向けて動いている。これは『タイヤ業界におけるデファクト・スタンダード』との位置づけを目指す壮大なプランだという。まさしく、入社3年目ながらも、亀田への期待は高まるばかりだ。それでも、謙虚な気持ちも忘れはしない。さまざまな人々との結束力があってこそ、新しく、画期的なタイヤを開発することができる。今後も全社的なチームワークを尊重しながら、安全、かつ地球環境に優しいタイヤを生み出していくのだ。
「チャンスがあれば、レースタイヤの設計や開発に関わりたい」と語る亀田。地道に実績を積み重ね、自らの夢を切り拓いていく。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学院では細胞に関する研究に携わっていた。基本的に自ら計画を立てて実行し、結果をまとめて次の実験に活かすというサイクルで研究を推進。このプロセスが、仕事に取り組む上でのベースとなっている。また、大学のレーシングカート部に所属し、レースではタイヤの特性など、今の仕事でも活かせる知識や経験を体感できた。
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