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最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
社運を賭けた大プロジェクトの指揮を執り、地域密着型ホールを誕生させた総務のプロ。
事務系−総務・人事・労務
株式会社セレモニー 管理部/課長
寺田 慎一郎 (43歳) Shinichiro Terada
入社6年目 / 産能短期大学(現 自由が丘産能短期大学) 能率科 出身

プロフィール
埼玉県在住の寺田にとって、地域密着型の事業運営を進めるセレモニーグループは身近な存在だった。妻が同グループの会員であったこと、以前から冠婚葬祭事業に興味があったことから、8年間勤めた百貨店を辞め、2003年4月に入社。新ホールの立ち上げに従事するなど、管理部門のトップとして、辣腕を振るっている。

プロローグ
「新ホールの立ち上げに、チカラを貸してほしい」

社長の勅命を受けたのは、2005年7月のことだった。それまでにも、いくつかの新ホールを立ち上げてきた寺田であったが、今回はちょっとワケが違う。というのも、新ホールの開設予定地は、セレモニーグループのお膝元である武蔵浦和。しかも、地上3階建ての巨大ホール。立地は、駅から徒歩5分の好環境とあって、地域住民からの注目度もかなり高いのだ。

完成予想図を手に、頭を抱える寺田。「スケジュールは、どう進むのか」「内装は、どんなコンセプトなのか」「スタッフは、何名必要なのか」「住民は、何を期待しているのか」。立ち上げ経験者だけに、これから起こるであろう様々な苦労、困難、葛藤は容易に想像できた。

オープン予定は、1年後。ホールの建設はもちろん、ソファなどの調度品の手配、物品の搬入・設置まで、すべて完了させなくてはいけない。会員獲得に汗を流した営業スタッフのため、オープニングメンバーとして働くセレモニースタッフのため、そして、新ホールの設立を心待ちにしている地域住民のため、絶対にミスや失敗は許されない。これから始まる長く険しい戦いに向け、寺田は大きく深呼吸をした。

オープン予定は1年後。社運を賭けた、壮大なプロジェクトが幕を開ける。 1
セレモニーグループといえば、埼玉県内では長い歴史と実績を誇る有名な冠婚葬祭互助会。県内に9つの葬祭場を有し、いずれも一流ホテルと見紛うほどの荘厳な造りが特徴に挙げられるほど、独自性の高いビジネス展開で、地域住民をはじめとするたくさんの人々から厚い信頼を築き上げてきた。そんなセレモニーグループにとって、9件目となる新ホールが“武蔵浦和ホール”。この立ち上げを任されたのが入社3年目、管理部門のトップを任されていた寺田だった。

「新ホールの立ち上げを、キミに任せたい」

社長の声が、いつも以上に力強く感じる。それもそうである。武蔵浦和はセレモニーグループのお膝元。建物も地上3階建てとあって、これまで手がけてきたホールのなかでも、最大級を誇る規模だ。完成予想図を見ると、外観の美しさはもちろん、内装は優美な調度品で飾られ、絢爛豪華。社運を賭けた重要プロジェクトであることは間違いなかった。

ミッションはただ1つ、「ここ武蔵浦和に新ホールを誕生させること」。ミスや納期の遅れは、絶対に許されない。高ぶる感情を抑えつつ、すでに頭の中はどんな段取りでオープンを迎えるかでいっぱいだった。

過去の失敗から学んだ、プロジェクトを成功に導く“ヒント”。 2
寺田には、過去にこんな苦い経験がある。それは、まだ管理部門に配属されて間もない頃。寺田のもとに、既存ホールのリニューアルオープンを手がける話が舞い込んできた。当時はまだ立ち上げの経験もなく、葬儀を担当した経験もない。それゆえ、プロジェクトを進行させるノウハウも皆無。「とにかく準備不足があってはならない」、そう自分に言い聞かせ、無我夢中で調度品を収集した。しかし、結果的に不必要なものまで揃えてしまい、膨大な在庫を残してしまったのだ。

当時の寺田には、「頭の中で完成図をつくり、全体バランスをイメージする」ということが不足していた。セレモニーグループのモットーは、“お客様が、くつろぎ、癒される環境づくり”。必死になる余り、一番大切なことを追求できていなかったのだ。以来、寺田は何度も現場に足を運ぶようになった。ヘルメットを被り、館内の部屋数、フロアの広さをチェックする。迅速かつ的確な行動は、寺田の成長を物語っていた。

ついに数ヶ月前までサラ地だった場所に、巨大な新ホールが姿を見せた。堂々とそびえ立つその姿に、強い決意が湧きあがる。「絶対にオープンさせるぞ」。オープンまで、残り一週間をきっていた。

「焦りはあった。でも、やるしかない」―寺田の信念が、周囲を動かす。 3
プロジェクトの真骨頂は、まさにこれからだ。建物の引渡し後、調度品の搬入、設置、各種機器やシステムの設定に至るまで、すべてをこの一週間で完璧に仕上げなくてはならない。トラックの手配、アルバイトの確保、レイアウトの指示…綿密に計算し尽くした寺田の手腕が試される。何度も立ち上げを経験してきた寺田だが、こればかりは毎回苦戦する場面だ。

「すべて、寺田に任せる」――社長の一言は、寺田にとっての誇りであり、厚い信頼を得ている証でもあった。その期待に応えようと、つい指示にもチカラが入る。「この絵は、どこに置くのか」「エントランスはどうでしょう」「でも、ちょっと大きすぎる」…そんなやりとりが、スタッフと続く。最前線で現場の指揮を執る寺田。ただの空き箱のようだったホールが、数々の調度品で彩られ、その姿を変えていく。

数日後、全体像が完成した。エントランスには、お客様を迎える大きなシャンデリア。2階には、空中庭園を備えたガラス張りのロビー。最上階には、団体葬も執り行なえる式場。館内には最新の音響システムを完備。寺田の熱い想いが込められた新ホールが、ここに完成した。あとは、社長の最終判断を待つのみである。

「よし、これでいこう!」―社長の最終がOKがでたのは、オープンの2日前だった。 4
これまでの経験上、社長がすんなりOKを出すことは多くない。オープン前々日、ついに社長が到着。出来たばかりの武蔵浦和ホールに、足を踏み入れる。内装を見わたす社長。一歩一歩を噛みしめるかのように、じっくり、ゆっくり、歩を進めていく。絵のタッチ、ソファの高さ、シャンデリアの明るさ…一つひとつが優れていても、バランスが悪ければNG。イチから搬入し直し、または、調度品そのものを新しくする必要もある。一体どれくらいの時間が経過しただろうか。社長がおもむろに口を開いた。緊張の瞬間である。

「よし、これでいこう!」

念願の社長OKがでた。張り詰めていた緊張の糸が、安堵のため息と同時に静かにほどけていった。大きな達成感と共に、改めて、館内をゆっくりと歩く社長と寺田。目に飛び込んでくる一つひとつの調度品たちが、まるでわが子のように見えてくる。ときに、写真に収めながら。ときに、社長と語り合いながら。確かめるたびに、この1年間の出来事が走馬灯のように甦り、感慨深いものがこみあげる。

――長い戦いが終わった。寺田はほっと胸を撫でおろし、誕生したばかりの“新・武蔵浦和ホール”をそっと後にした。

エピローグ
オープン前日、新ホールでは地域住民に向けたお披露目フェアが開催された。明るいエントランスをくぐると、次々とお客様の表情が和んでいく。入り口付近は、ホールの第一印象を決めるとあって、寺田が最もチカラをいれた自慢の場所でもある。

「まるで、ホテルのロビーのようね」

そんな一言ひとことが、寺田の胸に響く。しかし、その表情はいたってクールである。「もっと段取りよくやれたのではないかと、毎回反省するんです。スタッフが心地よく働くことができ、そして、お客様に豊かな気持ちをずっと提供し続けたい。そのこだわりが尽きることはありませんね」と、寺田。今回もお客様の評判は上々。だが、彼の目はすでに次へと向けられていた。
部下からの信頼も厚い寺田。普段は柔和な表情を見せるが、新ホールの立ち上げとなると、一気に身も心も引き締まるという。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
社会人として働きながら、短大に通っていた寺田。仕事と勉学の両立を可能にしたのは、優れた時間管理能力。毎日、「何を、いつまでに、どのように進めるのか」を明確にすることで、充実した日々を送ることが出来たのだ。また、何事も強い向上心を持って取り組む彼の性格も、学生時代と同様に、仕事の原動力となっている。
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