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最終更新日: 2007/11/22
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プロの仕事研究
極寒のサハリンで数千億円規模のLNGプラント建設に携わった機械設計のプロ。
技術系−機械・機構設計
エンジニアリングセンター 機器設計部 回転機チーム/メカニカル・エンジニア
大塚 一也 (30歳) Kazuya Otsuka
入社6年目 / 首都大学東京 工学部 機械工学科 出身

プロフィール
2ヶ月間の社員研修を経て、機器設計部に配属となる。2003年10月からマレーシアでの化学合成物プラント改造プロジェクトを担当。さらに、2004年4月よりサハリン2LNGプロジェクト、2007年からタイの化学合成物エチレン製造プラントの設計・施工を担当している。

プロローグ
2004年4月―――入社2年目の大塚に打診されたプロジェクトは、想像以上に大規模なものだった。

2002年末から着手された『サハリン2LNGプロジェクト』の人員強化のため、ちょうど担当プロジェクトが終焉を迎えていた大塚に機械設計の依頼が来たのだ。

別会社と共同で取り組むプロジェクトであり、プラント全体で数千億円の建設費がかけられている。現場で施工にあたる関係者の数も、数万人を超える。さらに液化天然ガスは、次世代のインフラを担うエネルギー資源として全世界的にも注目を集めている。「これほどスケールの大きな仕事は、初めてだ…」。大塚は心地よいプレッシャーを感じていた。4名のメンバーでスタートした機械設計のうち大塚の担当は、液化天然ガスを精製するプラントをコントロールするのに必要な圧縮空気を精製する機械部分と、消火用ポンプの設計。いずれも時間のかかるものだった。「今までのプロジェクトにはない経験をするチャンス。自分の力を、精一杯試してみよう」。大塚はプラント設計を発注したクライアントと、機械メーカーとの打合せを重ねていった。

突きつけられた、過酷な施工環境 1
プラントの稼働には電源と工業用水の確保が不可欠だが、工業用の設備は一切なかった。「プラント用発電設備を作らなければ。一般電源をプラントにまわしては、サハリンの街全体が停電になってしまう。しかもこの寒さ……普通の水道水を使えばきっと凍ってしまうはず。工業用水として使えるような仕組みを、盛り込まなければ」。山積されている課題を一つずつ確認し、スムーズな稼働を実現する機械設計に必要なシステムを考えた。

プラントは空気の圧縮によって自動的にアクチュエーターを動かして稼働させている。いくつも張り巡らされた配管のバルブを複数の機械によって制御し、天然ガスを気体から液体に変えていた。天然ガスは気体のままでも燃料として使用できるが、輸送しにくいことが難点だった。そこで、常温からマイナス200度まで一気に冷却・液化させ、アメリカ、中国、日本など世界各国へタンカーで輸送できるプラントの建設が求められていたのだ。

「プラントを実際に動かす“圧縮空気”は、自分の設計がなければ生まれない。心臓部を担っているといっても、過言ではないんだ」。大塚は設計図に向かった。

契約を守ることが、仕事なのか? 2
プラント完成までには3年ほどかかるため、設計も慎重に時間をかけて行いたいと考えていた。しかし「早く機械製造がしたい」というメーカーの要望と、現地で施工を担当する建設会社とのスケジューリング調整にはさまれ、多忙な日々が続いた。機械据えつけに向けた納期に追われながら、求められた機能を備えたモノづくりをしなければならない。

「このシステムを機械で再現するなら、もうすこし設計に手を加えた方が良い」。クライアントの意図を汲んでメーカーとともに実現しようと尽力し、ついに施工がスタートし、大塚も現場に飛んだ。しかし、ここからがさらなる問題の始まりだった。

「……この箇所、設計図と違っているけど?」。建設中の機械を確認しに訪れた大塚は、慌てて手元の図面を見比べた。「何度か設計図を修正した部分ですけど、新しい設計図に差替えましたよね?」という呼びかけに、現地の施工担当者は「最初にもらった設計図で施工する。それが契約条件だったはずだ」と答えた。頭の中が真っ白になった。

「仕事と割り切ってしまえば、最初に渡した設計図をもとに施工しても問題ないのかもしれない。でもクライアントのためを思えば、融通をきかせてくれてもいいんじゃないのか?」。

お互いを知ることが、プロジェクト成功の近道 3
自問自答をしたが、やはりそこまで大きな手間を感じる問題ではない。「かたくなな姿勢には、きっと理由があるはずだ。自分を信頼していないからかもしれない」。大塚は作業に携わっているスタッフを見渡し「もっとコミュニケーションを取る必要がある」と気づいた。

製造した機械を据えつけ、プラントを稼働させるには現場で作業にあたる彼らの存在が不可欠だ。「どんな想いで仕事に取り組んでいるのかをお互いに理解すれば、急な対応でも快く引き受けてくれるかもしれない」。大塚は早速、積極的にコミュニケーションを取り始めた。ロシア、フィリピン、インドネシア、中国―――多国籍なスタッフとの共通言語である英語で、急な仕様変更に至った理由を丁寧に説明した。さらに、仕事以外の時間帯にも何気なく声をかけ、人間性の伝わる対話を心がけた。

「英語がちゃんと話せなくても、伝えようとする気持ちが大切だ。このプラント設計に関わる全員が、自分の仲間なんだから」。大塚の願いはすぐに通じ、現場に活気が溢れるようになった。少しずつ機械の据えつけ作業が進んでいた矢先、大塚のもとに連絡が入った。「すぐに機械をテストランにかけたい」という知らせだった。

突然のテストラン。果たして無事に動くのか? 4
プラントをつなぐ配管内に入り込んだ不純物を消火用ポンプの排水で押し流し、その後に圧縮した空気で一気に乾燥させるために、他の機械に先駆けて稼働したいというのがクライアントの要望だった。「ついにこの手で設計した機械が動くんだ!」。喜びも束の間、新たな難問が待ち構えていた。機械を動かすためには電源を確保する必要がある。サハリン一帯を襲った寒波がもたらした雪の影響で、工業用の発電設備工事が遅れていた。「どうやって動かそう?」。大塚は頭を抱えた。

ふと顔を上げると、建設現場の側に大きな宿舎があるのが見えた。4000名の収容が可能なその宿舎には、簡易発電装置が10個ほど備え付けられていた。「消火用ポンプはディーゼルエンジンがあるから問題ない。この発電機で空気を送り出し、テストランに挑もう!」。大塚は機械のもとへ走った。

何度かヒューズが飛んだが、機械はしっかり動いた。専門性の高い設計、苦労したスケジュール調整、人間関係の難しさ――今まで学んできた様々な経験を思い出し、言葉にできない嬉しさがこみ上げた。

エピローグ
現在もサハリン2LNGプロジェクトは続いており、完成に向けて建設が進んでいる。大塚は並行して、タイの天然ガス資源をエチレンに加工するプラントの建設を担当している。サハリンで得たコミュニケーションの大切さをかみしめながら、仕事に励んでいる。

地面から排出した天然ガスのままでは、製品価値が低い。精製して純度を高めることで、違う製品として販売することもできるようになる。これからも、資源活用を実現させるプラント建設に携わっていこうと考えている。
学生時代は医療向け機械について学んでいた一方でスケールの大きな機械設計にも憧れ、海外を舞台に仕事ができる同社を志望した。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
アメリカンフットボールのキャプテンを務め、優勝に向かって練習を繰り返す毎日を送っていた。個性の強い20名のメンバーの気持ちを一つにまとめ、モチベーションを維持する工夫が求められた。このときに学んだメンバーとのやり取りは、多くの人と関わりながらプロジェクトを遂行する現在の仕事に活かされている。
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