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メーカー(機械・工作機械・ロボット) / メーカー(重電・産業プラント)
最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
世界に一台しかない製品を生み出すため、幾度もお客様のもとに通った機械設計のプロ。
技術系−機械・機構設計
技術部 設計第2課
浦田 隆司 (38歳) Ryuji Urata
入社16年目 / 大阪産業大学 工学部 交通機械工学科 出身

プロフィール
1993年入社。技術部設計課に配属され、民間企業向け製品の機械設計、官公庁向け製品の機械設計などを担当。入社3年目には、新製品開発のプロジェクトチームに抜擢され、見事やり遂げる。その後、企画・開発部門の仕事を4年間担当し、現在は、社内で最もCADソフトに詳しい機械設計エンジニアとして活躍中である。

プロローグ
まだ世の中に存在しない新しいモノを生み出したい――。そんな強い想いを抱き就職活動に取り組んでいた浦田であったが、焦っていた。次々と内定を勝ち取っていく周りの友人たち。未だ漠然としたその想いを向ける先が定まらない自分。遅れて就職活動をスタートさせたことを、少し後悔し始めていた。『新製品開発』と書かれた1通のダイレクトメールに目を奪われたのは、そんな矢先のこと。その送り主こそ、栗田機械製作所。世界に数台しかない巨大産業用機械の設計・開発を行っているメーカーだったのである。心は決まった。すぐさま面接を受け、見事内定を獲得。『フィルタプレス』というその産業用機械のことはよく知らなかったが、国内に留まらずアメリカ、イギリス、フランスなど海外でも多数の特許を取得している同社に、浦田は『新しいモノを生み出せる』可能性を感じたのである。

――入社3年目。いよいよ『新しいモノを生み出せる』チャンスが巡ってきた。しかしそこから、嫌というほど『生みの苦しみ』を味わうことになる。そしてその辛く長い日々を経て、浦田は『新しいモノを生み出す』機械設計エンジニアとして大きく成長していったのである。

『新製品開発』という言葉に惹かれて入社した会社、栗田機械製作所。 1
栗田機械製作所は、『フィルタプレス』という産業用機械の設計・開発を行っている専門メーカー。1930年の設立以来、プレス(しぼる)・フィルタ(こす)という技術を追求し、『圧力を掛けてフィルタでろ過することで液体と固体を分離する』機械の設計・開発を行ってきた。食品工業や染料・薬品、重工業といった分野の生産に、また環境保全に対する意識が高まってからは廃水・廃液、下水処理場の廃水処理の際にも『フィルタプレス』が必要不可欠となっていた。多岐に渡る産業分野、用途。納入する企業に合わせて、ほとんどの製品がオーダーメイド。栗田機械製作所は、日夜、新製品の開発に取り組んでいたのである。

その『新製品開発』という言葉に惹かれて入社した浦田は、まず『フィルタプレス』という機械のことを理解するため、製造現場に配属された。先輩の指示のもと、アシスタントとして開発テストを繰り返す日々。当初は誰もが経験するハードな労働もあり、入社前のイメージとのギャップに戸惑いを感じることもあったが、「まだ世の中に存在しない新しいモノを生み出したい」という想いは、日増しに強くなっていった。

――そして、チャンスが巡ってくる。

入社3年目のビッグチャンス。責任の重さを受け止めるとともに、自覚が芽生えていた。 2
入社3年目、新たな開発プロジェクトが発足した。従来の『フィルタプレス』を50%コストダウンした改良版の開発プロジェクト。会社をあげたこのプロジェクトでは設計、営業、製造、購買といった各部門に加え後の社長、栗田佳直も参加してチームが結成された。メンバーの中に機械設計エンジニアとして浦田の名前があったのである。それまで直属の先輩が担当していた仕事も受け持つようになり、浦田に掛かる責任は重くなった。「頼りっきりではいけない。自分がやらなければ!」。責任の重さを受け止めるとともに、浦田の心の中では自覚が芽生えていた。

メンバーは早速、開発に取り掛かった。仕入先や部品の形状、製造工程の見直し。50%のコストダウンに向け、全員で知恵を絞り、あらゆる可能性を試してみる。動作確認、耐久性のテストも怠らない。そうして試行錯誤を繰り返し1年が経とうとしていた頃、営業部門から嬉しい連絡が舞い込んできた。「試作品を見にきたメーカーさんが、前向きに検討してくれているそうだ!」。確かな手応えを感じたメンバーの士気は高まり、以前にも増して急ピッチでプロジェクトは動く。そして廃水の浄化用として興味を示してくれたメーカー仕様の『フィルタプレス』の試作品が完成。実際に納入して稼動させる段階までこぎつけたのだ。

大阪、長野、大阪、長野…。片道6時間の道のりを行き来する日々。 3
試作品は完成したが、ひとつ懸念点があった。そのメーカーが位置するのは、長野。栗田機械製作所の本社・工場の位置する大阪とはかなり離れた場所にあるのである。高速道路を使っても片道6時間の道のり。「不具合が生じたらどうしよう…」。製品を設置するため初めてそのメーカーの工場に足を運んだ際、そんな懸念が浦田の脳裏をかすめた。

新製品の導入に不具合はつきものである。いくら事前に考慮して開発していたとはいえ、製品を納入する先の環境、製品を使うオペレーターのスキルによっても大きく左右される。浦田の懸念は現実のものとなってしまう。

「突然、機械が止まったんだけど!」。試作品納入から数日後、大阪にいた浦田のもとに長野から問い合わせが入った。「今度はこの前とはなんか違う感じで止まってしまったよ!」。そうした問い合わせが頻繁に入るようになり、その都度、解決策を検討し何人かのメンバーと一緒に長野へ向かう。大阪から長野へ。そして大阪に帰ってきてメンバー全員で検討を繰り返し、また長野へ。浦田は、月に2〜3回のペースで大阪−長野間を行き来するようになっていった。

『生みの苦しみ』を経て完成した、世界に一台のオーダーメイド『フィルタプレス』。 4
不具合は微妙な調整作業で解決できるものが多かったが、会社として初めての機種の導入であったため入念なチェックが行われた。不具合を感知するセンサの位置、感度の微調整。そして機械を使用する人たちにその調整方法を理解してもらうための事細かな説明。地道な作業が主だった。半日掛けて不具合を解消し、とんぼ帰りをする浦田。長野の地に何度足を運んだことか。そのメーカーの担当者ともすっかり顔なじみとなっていた。

大阪−長野間、もう通い慣れた道のり。心地よい風が吹く春、青々とした新緑がまぶしい夏、一面の紅葉が美しい秋、深い雪が降りつもる冬。浦田には、そんな長野の四季の移り変わりを楽しむ心の余裕はなかった。そうして1年という月日が流れ、ようやく全ての不具合を解消。無事、そのメーカーで本格稼動を開始する準備が整ったのである。

プロジェクトチームが結成されてから足掛け2年。辛く長い『生みの苦しみ』を味わった浦田であったが、初めて本格稼動した時には、もうその苦しみは忘れていた。機械設計エンジニア浦田隆司が手掛けた、世界に一台しかないオーダーメイドの『フィルタプレス』が完成した瞬間でもあったのだから。

エピローグ
プロジェクトを振り返って浦田は、改めて『新しいモノを生み出す』ためには、まずその機械を深く理解することが大切だと実感した。ただ図面を描くのではなく、現場でその機械を使う人の意見に耳を傾け、機械の構造、使用方法などを知って初めて設計をすることができる。地道な作業、経験を積み重ねていくことで、不具合を未然に防ぐための設計ができるようになり、それがまた次の新たな製品開発に活かされるのだ。

「自分の設計したものが製品としてできあがり、それが想像通りに稼動した時に仕事のやりがいを感じます」と語る浦田。『新しいモノを生み出す』機械設計エンジニアの仕事は、お客様のもとで無事製品が稼動するまで終わらない。
社内で最もCADソフトに詳しい浦田。様々な部門の人たちの意見を踏まえ、今日も新製品の設計図面を描いている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
八百屋、ビアガーデンの給仕係、製造ラインのオペレーターなど、数多くのアルバイトを経験。様々な人と出会い、考え方や接し方などを学んだ経験は、社内外の様々な人たちとモノづくりに取り組んでいく際に活かされている。また、これらの経験で「あきらめずにやり遂げる」ことの大切さも痛感した。
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