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最終更新日: 2008/03/03
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プロの仕事研究
電動カート「ラクーター」を開発した、機械設計のプロ。
技術系−機械・機構設計
技術部 技術第2G
丸山 勝弘 (36歳) Katsuhiro Maruyama
入社14年目 / 近畿大学 理工学部 電子工学科 出身

プロフィール
「モノづくりに携わりたい」という思いから、メーカーに絞り就職活動を行う。さまざまな機械の生産を通して幅広い経験を積むことができると感じ、入社を決意した。技術部配属後、育苗関連機械、電動カート、精米機など、あらゆる分野の設計・開発を経験。5年目に初めて開発プロジェクトリーダーを任され、見事成功させた。

プロローグ
「モノって、もっと簡単にできるものだと思っていた」。これが、入社してしばらく後、機械の設計・研究・開発のプロセスを知った丸山が抱いた正直な感想だ。製品の構想段階からクライアントと打ち合わせを何度も行い、そこであらゆる判断を下しながらプロジェクトを進め、さまざまなトラブルを乗り越え形にする、いわゆる実務の取りまとめを行うのはチームリーダーの役割。チームの一員として携わっているだけでは、その流れのすべてを把握することは難しい。電動カートの協同開発事業に際して、初めてリーダーを任されることになったのは、丸山がそのことに不満を感じ始めていた頃のことだった。

「何をどうすればいいのか、漠然としたことしか分からない」という不安はあった。しかし、「あらゆる経験が自分を待っている」というワクワク感が、丸山の中で高まっていった。願ってもないチャンス。構想から完成まで、約10ヵ月。社会人として、そして何より「モノづくり」に携わる技術者として、丸山にとってかけがえのない経験となったこのプロジェクトの、成功までの軌跡を追う。

モノづくりの喜びを見出せずにいた4年間。 1
大和精工で機械の設計・研究・開発に携わる技術者は、少なくとも3年間は修行を積むことになる。当然、丸山も例外ではなかった。入社研修後に配属された技術部において、育苗関連機械の設計・開発チームに所属していた4年間は、実務の取りまとめを行うリーダーに指示されるまま、機械を形づくっている一つひとつの部品の図面作成など、細かい作業をこなしてきた。

その中で、丸山が学生時代に持っていたイメージとは違い、モノづくりには多くのプロセスや手間、苦労が存在することが理解できた。しかし、どうしても、「モノづくりをしている」という実感が持てない。それは、製品の構想段階で得意先からニーズを聞き取り、最終的にどのような特性を持つ製品を目指すのかを把握した上で、どのような方法でそれらを実現していくのかを考え提案するのは、主にチームリーダーだからだ。たとえば、部品の仕様一つ取っても、変わった形をしていれば、「どうしてだろう」という疑問がわいてくるが、その形であることの意味が分からないまま、ひたすら図面を起こしていくということを繰り返す日々が続いた。

リーダーへの抜擢で抱いた、大きな期待。 2
「何だか空しい」─そう思っていた入社5年目の春、ついに大きなチャンスが巡ってきた。チームリーダーに抜擢されたのだ。農業機械メーカー・株式会社クボタとの、電動カート協同開発事業だった。

電動カートとは、長時間の歩行が困難な高齢者や障害を持った人のための歩行補助具。従って、求められる安全性・快適性・利便性などのレベルはより高いものとなる。大和精工では初めて手掛ける製品だった。もちろん、丸山にとってもまったく未経験の分野だ。しかも、リーダーとして臨む初めてのプロジェクト。「自分にできるだろうか?」。そんな不安やプレッシャーは感じたものの、それ以上に大きく丸山の心を占めたのは、「すべてのプロセスに携わることができる」というワクワク感だった。手探りながらも、プロジェクトがスタートした。

モノづくりの苦労を体感する日々。 3
大和精工の技術部では、通常一人のリーダーが一つの製品の構想から製品化までの全ステップの進行を管理する。つまりそれだけ、リーダーがこなすべき仕事が多岐にわたるということになる。

まず、構想段階においては、得意先との仕様・日程についての打ち合わせはもちろん、製品の全体像を示す計画図の作成や、その計画図を基にチームのメンバーが作成した一つひとつの部品図のチェックを行う。さらに、試験機を作成する段階では、2、3ヵ月の間、社内や各部品を発注する100近くの協力会社との打ち合わせ、試験の結果に伴う設計の変更、再試験の手配などに奔走。そして、実際に生産に入る前には、部品ごとに必要となる指示書など、多くの書類を作成しなければならない。

すべてが初体験なだけに、苦労の連続だった。「ユーザーのニーズをどのように機械に取り入れるか?」。「安全さと使いやすさを両立させるためにはどうすればいいか?」。そうした課題をクリアすべく、何度も設計を変更し、その度に試験を行った。スケジュールとも闘いながら試行錯誤を繰り返し、分からないことがあれば、その都度上司に確認しながら進行。そうして10ヵ月後、電動カート「ラクーター」が完成した。

製品への強い愛着と大きなやりがいを実感。 4
丸山が、この「ラクーター」の開発を通じて得たものの大きさは計り知れない。リーダーとして全工程を経験したことで、モノづくりの大変さと、大変だからこそ生まれるやりがいを、本当の意味で実感する機会となった。また、技術者としての姿勢も大きく変化。製品の完成イメージを漠然と持ち、目の前の仕事をこなしていた今までとは明らかに違っていた。常に頭の中に完成イメージをくっきりと描きながら、実際に形にするための方法を自分で考えるという、能動的なスタイルが確立したのだ。さらに、さまざまな場面で行われる得意先・協力会社・社内での打ち合わせを通して、チームの一員として携わっているだけでは得られない多くの情報に触れることができたことも、成長に繋がった。

そして、「モノづくりの醍醐味」を見出すことができたという意味では、丸山にとって、大きな転機ともなった。その面白みを見出すことがなかなかできないまま、地道に経験を積み重ねてきた4年間があったから、嬉しさもひとしおだった。「ラクーターは、自分がつくった製品だ」と実感できた。その分、これまでには感じることができなかった愛着と自負もある。自分自身が構想から完成まで携わった製品が世に出るということの喜びをかみしめることによって、これからの技術者としての人生に欠くことのできない、大きな自信と高いモチベーションをも得ることができたのだ。

エピローグ
「ラクーター」での成功が評価され、その後も電動カート関連の研究・開発に携わり、チームリーダーとしての経験を積み重ねた丸山。その間にはユーザーの元へ足を運ぶ機会もあり、「これがないと生活ができない。すごく重宝している」という声を聞き、それまでの苦労も吹き飛んだ。2007年からは、精米機関連の設計・開発支援業務を担当。「円滑にもれなく進めること」をモットーに、チームメンバーとの連携を大切にしているという。将来の夢は、「今までにない新しい製品を作り出すこと」。自分から提案するための知識やアイデア力、ニーズをキャッチする力を培うべく、街のあらゆる「モノ」を観察する日々だ。
各部品の図面を起こす前段階でも、厚み約10センチのファイルに書類がぎっしり。それらを管理するリーダー業務は、非常に大変。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
電動カートはもちろん、入社後に携わった育苗関連機械、現在担当している精米機など、ほとんどすべての機械は電子制御されているもの。今回の協同開発プロジェクトだけではなく、入社してから経験したすべての仕事において、大学で専攻していた電子工学の知識を大いに活かすことができている。
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