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最終更新日: 2007/10/01
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プロの仕事研究
全く新しい技術を用いて、世界でも類を見ない位置検知センサを作り出した開発のプロ。
技術系−応用研究・技術開発
技術部門 企画・開発部/部長
松本 幸一 (41歳) Koichi Matsumoto
入社20年目 / 工学院大学 工学部 電子工学科 出身

プロフィール
就職活動時、「自動制御」に興味を持っており、ニレコを知る。ニレコのような中堅企業ならば、努力次第で会社規模を2倍、3倍にもできるチャンスがあると考え、入社。以来、溶鋼レベル計など様々な鉄鋼関連の製品や新技術の開発に専門的に取り組んできた。制御技術部長を経て、現在、技術部門企画・開発部長。

プロローグ
トラブルが起きたセンサは、製鉄所の冷延ラインの加熱炉の中で用いられていた。厚さ1mm以下に引き延ばされた薄い鋼板が、ラインの中心を通るように運ぶためには、ニレコの制御技術が不可欠であった。

しかし、「数百度にも及ぶ加熱炉の中で用いるには、従来のセンサでは不都合が多かったのです」。メンテナンス不要の鉄鋼向け位置検知センサという画期的な製品を生み出した松本幸一はそう語る。「従来の方式では、高温の加熱炉の中にセンサを設置しなければならず、耐久性の問題や炉の中のすすや鉄粉がセンサに付着し正常な検出ができなくなることがあったのです」。

そこで松本が考えたのは、1mm以下という薄い鋼板の端面に電磁波を放射し、その薄い端面で反射され戻ってくる微弱な電磁波の伝搬時間から鋼板の位置を計測するという画期的なセンサであった。これならば炉内の悪環境でも影響を受けず安定した計測ができ、また高温の炉の中にセンサを設置する必要がないと考えた。「しかし、従来のセンサと同等もしくはそれ以上の精度を持つ製品を短期間に開発しなければならなかったのです」と松本は言う。

ニレコの威信をかけた製品の開発に挑んだプロ・松本の仕事を追う。

火急の開発案件。 1
「早急な対応が求められる。松本君、君が直接開発を担当してくれないか?」。生産部門の設計部から、制御技術部に部長として異動してきたばかりの松本のところへ、営業部門から火急の開発案件が持ち込まれた。聞けば、海外の大手鉄鋼会社の冷延ラインで用いられていたセンサが原因不明のトラブルで誤動作しているという。自動車や缶詰めなどに用いられる薄鋼板(冷延鋼板)は高温の加熱処理がなされる。数百度にも及ぶ過酷な炉内で鋼板を制御するために、特殊なセンサが用いられていたのだ。

早速、現地に作業員を送り、原因を調査すると、意外なことが分かった。トラブルは、加熱炉の熱によるものではなく、炉内のすすや鉄粉などがセンサに付着することで起こっていたのだ。一時的な対策として、センサにゴミが付着しないようパージする(取り除く)機構を取り付けた。しかし、顧客からは恒久的な対策が求められていた。「メンテナンスを必要としないセンサはないのか」。特殊なセンサである。しかし、鉄鋼関係のプロセス制御装置メーカとして出発したニレコ。会社の威信にかけて、製品を開発しなければならなかった。

1mm以下の鋼板を横から検出する方法。 2
入社以来、制御技術部に配属され、新しい技術の研究と開発に取り組んできた松本。この課題を受け、考えた末に辿り着いたのが、電磁波を用いた位置検知センサであった。レーダの原理を利用したこの方式を用いて鋼板の薄い端面までの距離を計測すれば、従来のセンサで問題となっていた炉内の温度による耐久性、すすや鉄粉の付着による影響などがなくなる。だが1mm以下の薄い鋼板の端面までの距離を計測することはできるだろうか・・・。松本自身も半信半疑であった。

「現在、新しい技術を用いたセンサを開発しています。今までにない画期的なセンサですよ」。顧客の前で営業の担当者が話す。その横で松本は電磁波センサのプレゼンテーションを行なった。「これは、すごい」。顧客は唸った。まさか厚さ1mm以下の鋼板を横から検出できるとは思っていなかったのである。社内で基礎実験を見せた時にも、どよめきが起こったほど画期的なアイデアだった。

こうして電磁波を用いたセンサの開発が進められることになった。ただ、この新しいセンサは大きな技術的課題を一つ抱えていた。それは精度の問題であった。鋼板の位置検出センサとして要求される精度は通常±5mm程度であるが、どうしてもその精度を満足させることができなかったのである。

検出精度±5mmの壁。 3
そんな松本をよそに、すでに技術は確立されているものとして、製品の導入の話はとんとん拍子で進んでいった。「1年後に製品導入!? そんな無茶なことできませんよ」。営業に対して、松本は言ったが、事情が事情だけに何とかするしかなかった。新しいセンサは、炉の壁に埋め込まれたアンテナから電磁波を鋼板の端面に向け放射し、端面から反射され戻ってくる電磁波の伝搬時間から鋼板の位置を計測する方式である。しかし、どんなに工夫を重ねても、誤差を±5mm以下に抑えることができなかったのである。

そのため、松本は文献を当たり、ありとあらゆる方法を試みた。しかし、過ぎていくのは時間ばかりだった・・・。同じような問題を抱えた他の顧客から「当社もその製品を導入したい」との要望があり、営業だけでなく会社中が製品化を待っていた。「なんとしても、この製品を開発しなければならないな・・・」。焦りと思い悩む日々が続いた。

そんなある日、オシロスコープに映し出される波形を見て、何となく考え事をしている松本の脳裏に、ふとあるアイデアが思い浮かんだ。「どうして、今までこの原理を用いてみなかったんだろう・・・」。早速試してみると、目標としていた±5mmの精度を大きく上回る±1mm以下で鋼板の位置が計測できた。「これだ。この方法だ!」。松本は狂喜した。

長い苦しみの先に待っていたもの。 4
すぐさまスタッフを集めて、松本は新しい測定方法を話した。「この方法を用いれば、すごい製品が実現できるぞ」。電気回路や制御ソフトの設計担当たちは目を輝かせた。トラブル発生からすでに1年以上の時間が過ぎていた。苦難を共にしてきた仲間たち。具体的な作業内容について、高揚した気分で松本はスタッフたちと話し合った。見方さえ変えれば、どうしても越えられないように思えていた壁も、驚くほど簡単に突破することができるのだ。

「これで問題は解決されますよ」。製品が完成すると、松本は再び海外の工場に赴き、製品の取り付け工事にあたった。工事が済むと、いよいよラインの試運転が行なわれた。緊張の一瞬。その後、顧客から感嘆の声が上がった。「動いていますよ! 誤差もない。ないですね!」。ニレコの威信がかかった新製品―――長い間、その開発の重圧に耐えてきた松本。その瞬間、肩から大きな荷を下ろしたような安堵と今までにない満足を覚えていた。

エピローグ
「結果的に見れば、アイデアは一瞬にして生まれるものですが、それまでに考えに考えているからこそ、ふと思いつくものなんですよ」。プロジェクトを振り返って、松本はそう語る。「入社以来、様々な技術の開発にずっと取り組んできた自分だからこそできた製品」。電磁波で距離を計測するという技術も入社して間もない頃、ある鉄鋼会社と共同で開発を行なっていたものだった。

開発したセンサは世界の名だたる鉄鋼会社から引き合いが寄せられるほどのものとなった。今後の抱負は、「プロセス、ウェブ、検査機事業の他にもう一つの事業の柱を建てられるような技術を仲間とともに生み出すこと」。飽くことなく、松本の技術開発への挑戦は続く。
現場での技術的なトップを務めるかたわら、新製品を開発する。アイデアの創出が得意な松本ならではの仕事を行なっている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
デパートの食品コーナーでのアルバイトに力を入れていた学生時代。商品の陳列を変えたり、お客様とのコミュニケーションノートを設置したり…よりよい売場にするために様々なアイデアを出していた。この時の経験が少なからず、現在の仕事にも役立っている。
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