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メーカー(化学・ゴム) / マスコミ(印刷)
最終更新日: 2008/03/31
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プロの仕事研究
原料研究で、防振材用ゲルの窮地を救った研究開発のプロ。
技術系−応用研究・技術開発
株式会社タイカ 次世代商品開発室
永田 慎一郎 (27歳) Shinichiro Nagata
入社5年目 / 富山大学 理学部 物理学科 出身

プロフィール
中学生のときからバスケットボールをやっていた関係で、シューズに使われるアルファゲルを知っていた。タイカグループの説明会に参加し、技術的な興味を感じたことから入社。1年目から製品開発部の戦力として活躍し、2年目からは研究開発本部へ異動。現在は、次世代商品の研究に没頭している。

プロローグ
「今までの防振材が作れなくなる?」。前々から永田は、その話を聞いていた。

振動を最小限にする防振材は、バネや金属の部品、柔らかいゲルなど、様々なものを組み合わせて作成されるが、その中のゲルを構成する原料の一つが製造中止となるという。その原料は少量しか使用しないものの、防振材の性能を維持するためには欠かせない。そこで、今まで使っていた原料と、同じ性質を持つ代替品を検討する必要性が出てきた。そのプロジェクトを任されたのが永田だった。

入社2年目の永田は、製品開発部から研究開発本部へ異動してきて半年ほどが経過していた。もともと製品開発部では、CDなどの音とびを防ぐためのダンピング材を開発していたため、ゲルのチューニングには自信があった。また、研究開発本部へ異動してきてある程度の時間も経っているため、方法論も身につけつつある。だから当初は、「このプロジェクトにはそれほど時間もかからないだろう」と思っていた。しかし、代替原料のリサーチは想像以上に難しい作業だった。

代替原料の開発に時間的な余裕はなかった。 1
それまで使っていた原料の確保もできてはいるが、急な発注があったときのために、代替原料は可能な限り早く見つけなければならない。新しい原料を探し出し、品質チェックをクリアするまで、できれば半年くらいで終わらせたいと考えた。「すぐに原料を調べよう」。永田は動き出した。

製造中止となったその原料は、複数の素材を混ぜ合わせてできたものではない。そのため、代替品もできる限り1種類の原料でまかないたかった。手順が増えるとそれだけ作業が複雑になり、ミスが起きる可能性が高くなったり、コストパフォーマンスに支障をきたす可能性がある。「何かないだろうか?」。永田は似たような性質を持つ原料をいくつも集め、実験を開始した。「もしかしたら、これ、いけるかも…」。そう思いながら実験を続けたが、なかなか思ったような結果は得られなかった。性能的には高くても耐久性が低かったり、その逆に耐久性は十分でも強度が足りなかったりしたのだ。時間だけがむなしく過ぎていった。

工程はできるだけにシンプルに。 2
「まったく同じ手順では駄目だ…」。それまでの実験では、どうしても必要な性質が出てこなかった。永田は悩んだ末に、一つだけ工程を増やすことにした。「原料に添加剤を入れよう」。工程はできるだけシンプルにしたい。いくつもの素材を混ぜ合わせることで狙い以外の性質が出る可能性もある。それでも、添加剤を加える以外の方法を、永田は思いつかなかった。

候補となるいくつもの原料に添加剤を混ぜ、何度も実験を繰り返した。少しでも理想的な数値に近づけたら、また原料を変化させ、性質を調べていった。この作業だけで、すでに数ヶ月が経過した。その末に、永田はかなり性質的に近い代替原料を見つけ出すことができた。「これでも、まだまだだ」。かなり近いとはいうものの、それまでの使用していた製品とまったく同じというレベルには達していなかった。その後の配合でも、同じようなチューニングを何度も重ねていった。

一つのミスを犯していた永田。 3
ほぼ同じ原料を作り出すことに成功した永田は、早速試作テストへと段階を移した。「かなりうまくいくのではないか?」。そう思いながら配合を済ませ、サンプルのテストを開始した。「あれ…?」。テストの途中で少し違和感を覚えたが気にせずに突き進んだ。「原料の値は相当近かったんだ。大丈夫に決まっている」。しかし、永田はここでミスを犯していた。

テストが終わり、その結果を整理しているとき、永田は愕然とした。「全然違うじゃないか…」。まったく同じ結果が出るとは思っていなかったものの、これほどまでにずれるとは思いもしなかった。原料の段階では問題なかったはずだ。では、どこで問題が生じたのか…。ようやく一つの要因に行き着いた。試作品を作成するとき、素材を混ぜ合わせる比率を間違えてしまったのだ。手間を省こうとしたがゆえの、凡ミスだった。

永田は、すぐに実験をやり直した。何度も計算を繰り返し、同じようなミスを絶対しないように気をつけた。そしてついに代替原料を使用した防振材用ゲルの試作を完成させた。

在庫が底をつき、永田の代替品への期待が高まった。 4
プロジェクトが始動して半年が経過していた。しかし、永田が作っている防振材はまだ実用段階に入っていなかった。幸いここまでは在庫原料でなんとか対応できたが、限界は近い。「早くしなければ…」。焦りを覚えた。しかし、永田の力ではどうにもならない問題があった。新しい原料を使った製品は、各種の認定基準をクリアしなければならないのだ。

防振材に対する許可基準は年々厳しくなっている。数十年前、もとの原料を使った防振材がクリアした基準よりも、現在のハードルは数段高い。そのため、ゲルやバネ、金属を組み合わせて作った防振材を、硬度や耐久性、その他様々な面からチェックし直さなければならないのだ。また、そのチェックに必要な機械も特殊であるため、すぐに使えるわけではない。「まだ順番は来ないのか?」。どれだけ急いでいても、実験は一つずつしかできない。

硬度や粘着性など一つひとつクリアしていき、「いよいよ量産移管が始まる」という段階になったときには、それまでの在庫は底をついていた。

そして、永田が量産への移管に立ち会ったとき、すでに新原料への発注が来ていた。つまり、ここでできあがった製品が基準をクリアしていれば、すぐに出荷することが決まっていたのだ。「頼む。うまくいってくれ…」。この思いは通じ、永田が作った原料の入ったゲルは、早速客先へと発送された。自分の見出した原料が社会に出て、数多くの人々の暮らしに役立つという実感が得られる日を、永田はようやく迎えることができたのだった。

エピローグ
最初のバージョンが出荷されて以来、永田が取り組んだ代替原料を使用した防振材は何のトラブルもなく使用されている。「それは本当に何よりです。当初の予定より、代替品の作成が遅れてしまっていたので焦りましたけど、今は何もトラブルがなくてホッとしています」。

現在永田は、ゲルの研究からは少し離れ、防振材の性質をコントロールする研究を行っている。「上司からは、ある程度長期的な研究をしてもいいと言われていますが、なるべく早く結果を出したいですね。そしていずれ、この分野のスペシャリストにまで登りつめたいです」。日本が誇る世界的技術とともに、自身も世界へ羽ばたく。それが、永田の今の目標だ。
タイカグループの技術の発展を支える研究員として、永田の挑戦はこれからも続いていく。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
中学生のころからバスケットボール部でプレーし続けた。大学時代も、レポート作成や実験の合間を縫って練習メニューを考え、部を引っ張っていった。バスケットボールはチームスポーツのため、チームメイト同士の意思疎通が大事。ここで培ったコミュニケーション能力は仕事にも活かせている。
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