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サービス(レストラン・フードビジネス) / サービス(専門コンサルティング(フランチャイズビジネス系))
最終更新日: 2007/10/01
(マークの説明) 正社員 理文不問
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プロの仕事研究
“我が家”をコンセプトに喜びと感動を分かち合う場を提供した、店舗経営のプロ。
営業・販売系−店長
代表取締役社長
武長 太郎 (31歳) Taro Takenaga
入社12年目 / 中央大学 法学部 出身

プロフィール
大学を1単位も取らずに中退。その後、知人だったクラブのママから『飲食店経営』を打診され、大成功を収めた。1997年に20歳で起業し、現在は8業態11店舗の経営に従事。また独立を支援する店舗プロデュース、NPO法人『居酒屋甲子園』の活動にも尽力し、フードビジネスを通じた地域活性化に取り組んでいる。

プロローグ
武長は、悩んでいた。

大学に入学したものの、何を目標にして勉強をすればいいのかが分からない。「人生は、一度きり。後悔したくない」という想いだけが、頭の中をグルグルと回っていた。「一人になって、冷静に考えよう」。そう決意した武長は、旅に出た。現金5万円を握りしめ、車で西へ向かった。

長崎に着いたのは、出発して数週間が過ぎた頃だった。ガソリン代が底をつき、現地でアルバイトをしながら旅行資金を捻出していた武長は、地元の人々と触れ合いながら親交を築いていた。スイカ売りの男性に会ったのも、偶然だった。「旅をしているのか? そりゃあ、大変だな…おごるから、飲みに行こうか」。路上で知り合った男性と意気投合し、武長は小さなダイニングバーを訪れた。

こぢんまりとした店内は笑いの絶えない、温かな雰囲気に満ちていた。「こんな店を、開きたい」―――悩み続けていた武長が求めていた答えが、そこにあった。起業を通じて、自分がやりたいと思ったことを形にしようと大学を辞めた。

それから、2年後の1997年12月。寒空の下、武長はオープンしたばかりの自分の店の前でお客様を待っていた。

我が家に、お客様を迎えるとしたら 1
旅から戻った武長は、設立資金を確保するために知人の飲食店で店長を務めた。2年間で貯めた500万円を投資し、いよいよ目標としてきた店舗開発をスタートした。

出店エリアは、自身の出身地である千葉県・本八幡(もとやわた)にしようと決めていた。「良い立地条件の建物はないだろうか?」と物件を探していた武長に、連絡が入った。「もし良かったら、元気な地元の方に店舗を譲りたいんですが…」。武長はすぐに、現場に向かった。申し分のない条件だった。「ここで店を、やらせてください!」。初老のオーナーは、武長の頼みを快諾した。

場所の決定と同時に、店舗のコンセプトと名前も考えた。「長崎で訪れたダイニングバーのような、あんな店が作りたい」と漠然と思った。「人が一番、安らげる“我が家”をテーマにした店舗を手掛けよう。そういう場が増えれば、地域活性にもなる」。方向性が見えた時、自然に“一家”という言葉が脳裏に浮かんだ。店名は『くいどころバー 一家』。和をイメージした木造のバーでくつろげる、地域一番店を仕掛ける。知識も経験も、何もない。あるのは、『お客様が喜ぶ、笑いの絶えない我が家のような店を作りたい』気持ちだけだった。

何もない、誰にも頼れない 2
オープン予定は、3ヵ月後の12月。年間を通じて、飲食店が最も忙しい時期を狙った。出店エリア周辺には、大手居酒屋チェーンが並んでおり、激しいシェア争いが予測された。だが、武長はひるまなかった。「地域一番店を目指せば、必ずシェアを得ることができる。お客様は企業の組織力で来店を判断しているんじゃない。各店舗が提供するサービスで選んでいるはずだ」と信じて、メニュー開発に取り組み始めた。

すべてお客様視点で考え、支払いたい価格・食べたい料理を中心に構成した。書店に並んだ料理本を参考に、原価率や利益を度外視したメニューを試作していく。自らキッチンに立ち、何度も試行錯誤を重ねた。さらに求人募集のチラシを駅前で配布。自分のアイデアと行動力だけで、アルバイト16名と社員2名を集めた。オープンまで残り1ヶ月をきるなか、手探りの人材育成を進めた。

「ここは、我が家です。あなたの最愛の人が来たときに、どんな行動をするのか。考えてみて下さい」。マニュアルはあえて作らず、お客様をもてなす意識と、笑って帰ってほしいという想いがあるかを重視した指導を続けた。

そして、オープン前日。武長は眠れない夜を過ごしていた。

お客様が来ることを、ただ祈った 3
時計の針が、午後5時を指した。すっかり暗くなった路上に、そっと街頭の灯りがともった。真新しい看板にも電気が通り、“一家”の文字がまぶしく光った。「いよいよ、だ」。意気込む武長とスタッフたちは、お客様の姿を待ち続けた。

しかし、1時間経っても誰も訪れる気配がない。武長は少しずつ、焦りを感じ始めた。「看板の電源が落ちて、店が休みだと思われているんだろうか?」と不安でいっぱいになりながら、何度も店の前を出入りした。来店促進につながる戦略は駅前でのチラシ配りのみ。「もし、このままずっと誰も来てくれなかったら…どう責任を取ればいいんだ?」。ため息をつきそうになった、その時―――初めてのお客様が入ってきた。二人の女性客だった。

「おかえりなさい!」。武長は全身で嬉しさを表しながら、来店したお客様を迎えた。丁寧に座席へ案内し、メニューを一つひとつ解説しながらオーダーを取った。料理が出来上がる時間が、最高に長く感じた。完成した料理を運ぶたびに、お客様との会話を楽しんだ。

午後8時、スタッフが必死に配っていたチラシが功を奏し、いつのまにか店内は満席になっていた。

コースターの裏に書かれた、メッセージ 4
「ごちそうさま。じゃあ、そろそろ帰ります」と言って、席をゆずってくれた最初のお客様の後を追い、武長は店舗の外に出た。「今日は、本当にどうもありがとうございました」。深々と頭を下げた武長の手に、二人はコースターを握らせた。「これ、後で見ておいて」と微笑みながら去っていく様子を見送ると、何気なくコースターを裏返した。

『本八幡に、こんな良いお店ができて、嬉しかったです。今度は、たくさんの友人を連れていきますね。今日はどうもありがとう』。

胸の奥が、ツンとした。ひとりでに涙が溢れてきた。慌てて手のひらで顔を拭ったが、涙が止まることはなかった。店内に戻ると、スタッフが驚いて声を掛けてきた。「社長、どうしたんですか? 泣いているんですか?!」。武長は「嬉しいからだよ。嬉しいと、人間は泣くもんなんだ」と笑った。

人の喜びが、自らの喜びに変わることを、このとき武長は初めて知った。そして今までの不安や苦労を克服した分、大きな感動に包まれていることに気づいた。「この感情を、もっと多くの仲間と分かち合いたい。お客様に喜びと感動を与えることが、自分たちの喜び・感動に変わることを伝えたい」。

武長は改めて、この経験がスタートにすぎないことを確信した。

エピローグ
会社設立から10年が経ち、現在は8業態11店舗を展開するまでに成長した。スタッフとの出会い、お客様との出会いを通じて、多くの気づきを得た武長だったが、『誰かの喜びが、自分の喜びになる』という気持ちが、変わることはない。ひたすらにお客様満足だけを追い求めた方法も、間違っていなかったと自信を持って言える。

設立5年目の頃、いかに売上を維持するかを重視した結果、全店の業績が悪化。理由も分からず叱責する日々を送っていたが、一向に状況は変わらないと理解し、ようやく初心に帰ることができた。「これからもお客様視点を忘れず、相手をもてなす姿勢を貫いていく」と語った。
「参加型の自燃組織にしていきたい」と願う武長。いつか独立したいと思う若者が入る、学校のような店舗にしたいと思っている。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
ホテルで働いていた際に、接客の心得を学んだ。キャリアが浅くても、おもてなしの心があれば心ない接客をするベテランよりも新人が評価されるとアドバイスされた。お客様の希望を察し、「してほしい」と思うことをするホスピタリティの精神が、現在のサービス提供に役立っている。
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