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インフラ(鉄道・航空・海運・運輸)
最終更新日: 2008/03/03
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プロの仕事研究
高くなった鼻をミスで折られたが、仕事をする上で大切な意識が芽生えた事務のプロ。
事務系−事務系その他
企画部
酒井 拓一 (31歳) Takuichi Sakai
入社9年目 / 和歌山大学 教育学部 出身

プロフィール
教師を目指してきたが、大学3年生時の教育実習で、抱いていた教育現場のイメージを覆された。「このままでは、自分の思うような教育はできない…」。思い切って進路を変更し、一般企業への就職を目指す。身近な食品を扱うところに親近感を覚え、マルハニチロ物流に入社。立会い業務に始まり、現在は企画部で活躍中。

プロローグ
長靴を履き、防寒具を身にまとった酒井は、呆然と立ち尽くしていた。視線は宙の一点を見つめている。「俺の人生、今後どうなっていくのか…」。入社初日、10度に室温調整された巨大な倉庫の中に酒井はいた。

「縁があって始めたことは、何でも一生懸命にやり抜く」。これは、酒井が行動指針としている言葉だ。音譜も分からない中で出会った学生時代の、ある楽器。それでも、4年間やり抜いて楽しんできた。就職活動で初めて知り、入社を果たしたマルハニチロ物流。どんな状況に身を置いても“一生懸命にやり抜く姿”は健在だった。楽な仕事ではないため、周りを見る余裕もないままに酒井は走り抜けてきた。「一般の人の目に触れる仕事ではない」。そう感じていた酒井だったが、やがて自分たちの存在意義を強く感じるようになる。「俺たちがいなければ、日本の食事情は成り立たない」。仕事に誇りを感じるまでに、意識は変化していった。

入社2年目に引き起こしてしまったミスが、意識を変化させる発端となった。「以前のままであれば、今の自分はいない」。酒井の心に大きな変化をもたらした、その出来事とは…。

抱いていた仕事のイメージとのギャップ。 1
事務職として入社を果たした酒井。「オフィスでパソコンを操作しながら…」。そんなイメージは、入社初日に覆された。指示されるがまま履いた鉄板入りの長靴、寒いからと着させられた防寒着、案内された先に広がっていた巨大な倉庫、先輩社員と談笑しているトラックの運転手、『牛肉』と書かれたケースを運びながら目の前を通り過ぎていくフォークリフト―――「ここが俺の仕事場になるのか…?」。眼が点になるとは、まさにその姿を指していた。

仕事を終えて自宅に戻った酒井の頭を過ぎるのは、倉庫で働く先輩たちの姿。結婚、出産、そして仕事をしながら家庭を守る姿。「先輩たちには、自分の知らない“やりがい”があるんだろうな」。前向きに現実を捉えながらも、抱いていた仕事に対するイメージとのギャップを埋めるのに、酒井は3日間を要した。「縁があって始めたんだから、一生懸命やろう!」。そう決断し、酒井は新たなスタートを切った。トラックが配送してくる荷物の種類、個数をチェックし、倉庫に保管する。また出庫する際にも荷物の種類、個数をチェックし、トラックに積み込む。この立会い作業が、酒井のメイン業務になった。そこには想像もしなかった仕事の奥深さがあった。

周囲から頼られる存在に成長していく。 2
お客様から預かったときの状態のまま、返さないといけない。質を保ちながら保管するのが非常に難しいことを、酒井は知った。食材によってはケースが一緒にも関わらず、冷蔵品、冷凍品に分かれていたりもするのだ。開封すると異物が混入する危険性があるため、開けずに中身を見極めなければならない。伝票と照らし合わせるが、ミスは発生してしまう。冷凍品にも関わらず、荷主へ届けた際に溶けていたり、冷蔵品にも関わらず凍っていたり…。また、食材同士で匂いがうつるといった相性があることも学んだ。マイナス30度で保存すべき食材がマイナス15度で保存されていれば、見た目は同じであっても質が落ちる。食材の知識も先輩たちから学びながら、実務で活かしていった。

「酒井、カニを保管しといてくれ!」。先輩から指示が飛ぶ。「おーし、やったる!」。仕事を一人前にこなすようになった1年目の終盤からは、徐々に周囲から頼られる存在になっていった。「○○さんより、酒井君のほうが早いから、彼に頼んで!」。他部署から寄せられる、そういった評価が自分のモチベーションを上げる。そんな酒井に転機が訪れた。2年目、酒井は現場での立会いではなく、事務へ異動することになったのだ。

慣れが生んだ、入社以来最大のミス…。 3
「異動?!」。周囲から頼られることで仕事の楽しさを見出していただけに、虚をつかれた。それでも、「仕事も分かってきた。どこへ行っても通用するはずだ」と、自信に満ちていた酒井は、気持ちを新たに事務へと異動した。仕事は、トラックの運転手、荷主、そして立会いのスタッフと関わる。事務はトラックの運転手から伝票を受け取り、入・出庫する荷物の確認を行う。その内容を事務が倉庫の立会いスタッフに報告し、倉庫で荷物を受け取ったり、指定された荷物・量をトラックに積み込んで配送していくフローになる。

順調に仕事をこなしていた酒井だったが、慣れてくると同時に隙ができてしまった。ある日、誤出庫してしまったのだ。トラックの運転手から預かった伝票どおりに倉庫へ出荷指示をかけたつもりだったが、少ない量で依頼をかけてしまったのだ。「届いた牛肉が、足りないぞ…」。荷主から連絡を受けてミスが発覚した。その日レストランで使用する牛肉の量に満たないため、お客様に料理を出すことができない。大きな売上損失だ。「申し訳ございません」。電話で頭を下げる酒井は、その後上司に呼び止められた。

仕事をする上でベースとなる大切な意識が生まれた。 4
上司は諭すように口を開いた。「今回の件を軽く見ていないか? ミスしたからといって、謝れば済む問題じゃないんだよ」。謝罪して終わりだと思っていた酒井は、見抜かれていた。長い付き合いにより荷主からの信用を失うことは避けられたものの、些細な自分のミスが会社の信用問題に繋がることを教えられた。「もしミスによって、他社の倉庫会社へ移ってしまったら…」。取引先によっては、1億円の売上を損失することだってあり得る。高くなった鼻を根元からへし折られた気分だった。

酒井は1ヶ月ほど、放心状態に陥った。「またミスをしてしまったら…」。仕事をしても常に恐怖感が付きまとう。時間の経過とともに落ち着きを取り戻していったが、そこに以前の酒井の姿はなかった。「たとえ些細な仕事でも、自分の仕事に責任を持たなくてはならない!」。従来から仕事の完成度には評価が高かったが、取り組み方にも大きな変化が表れたのだった。酒井はこの後、驚愕するような仕事を成し遂げたわけではない。だが、ミスを起こすまで気付かなかった一つひとつの仕事の重要性に気付くことができた。これにより、以前にも増して精度の高い仕事を実現するようになっていくのだった。

エピローグ
立会い業務、事務、総務、そして企画部と、さまざまな部署を通じて業務に携わってきたことで、入社時には気付かなかったマルハニチロ物流の社会的な存在意義を、強く意識するようになった。「私たちがいなければ、日本の食事情はマヒしますよ」。そのことが誇りとなり、現在の仕事にも熱意を持って取り組めている。「今後は“倉庫”会社のイメージをもっと上げていきたいですね」。世間からも認知度の高い業種として、そして酒井が感じている存在意義を一般の人々にも広く感じてもらいたいと、内に想いを秘める。「そのために、さまざまな角度から自社の運営業務に携わっていければいいですね」。想いを実現するために、酒井は走り続ける。
たまに倉庫へ顔を出し、立会いのスタッフとコミュニケーションを図る。現場の状況を知ることが、企画部でも重要なことなのだ。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学時代は音楽部に所属。2年時にはマネージャーとして、関西11大学が合同で行う演奏会を取り仕切った。また、全国規模の演奏会の取りまとめも行っていたので、100人、200人単位の人前で話す度胸がついた。また、先輩にも指示を出していたので、入社してからも戸惑いなく、指示を出すことができた。
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