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最終更新日: 2008/03/24
(マークの説明) 正社員 理文不問
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プロの仕事研究
電気の専門家でありながら建築・機械に精通する、住宅設備設計のプロ。
技術系−電気・電子設計
技術管理部/主任
柏原 隆 (31歳) Takashi Kashihara
大阪市立大学大学院 工学研究科 機械物理系専攻 出身

プロフィール
前職は、強電を専門に扱う技術者だった。やがて「仕事の幅を広げたい」と考えるようになり、転職を決意する。その中で出会ったのが、株式会社アーバネックス。省エネに力を入れている点、また電気のみならず建築・機械の知識まで身につく環境が、理想と合致した。入社後は技術管理部のホープとして活躍している。

プロローグ
「柱がこう立っているから…この位置だと邪魔ですかねえ」 「消防法の改正箇所ですけど…」。

これらの言葉を発している男――柏原隆は、電気設計を行なう技術者である。しかし、その仕事内容はもはや「電気」という範囲ではくくれない。というのも、彼は「不動産会社の技術者」という存在だからだ。

柏原が勤務する、株式会社アーバネックス。関西圏の不動産・都市開発を行なうデベロッパーだ。同社が柏原のような技術者を必要としている理由は、その事業形態にある。キーワードは「一等地」と「中長期」。つまり「価値の高い土地に物件を建て、長く保有する」というスタイルが同社の特徴である。一等地にある賃貸物件ならば、安定して高い収益を上げることができる。事実、同社の売上のうち大半はオフィスビルなどの賃貸収入だ。そして安定した収益を保ち続けるために必要なのが、技術者の力で物件の「質」を維持することなのである。

物件の設計コンセプト策定から省エネ・省コスト化の実施まで、同社の技術者が担う仕事は幅広い。建築物を扱うからには、建築基準法や消防法といった知識にも精通する必要がある。柏原がそれを実感したのは、入社してすぐのことだった――。

入社早々、新築物件の立ち上げを任される。 1
「ひとつの仕事だけでは、つまらない」。

柏原がアーバネックスへの入社を決めたのは、技術者として幅広い知識を身につけるためだった。もともと他社で強電を専門としていたが、将来のためにもステップアップしようと考えたのだ。会社としても、柏原には次世代のコアメンバーとして大きな期待を寄せていた。というのも、これまで電気関係を専門とする人材はいなかったからだ。

――会社からの期待は、入社後すぐに示された。新しい集合住宅を建てるにあたり、その設備設計を柏原が担当することになったのだ。もちろんひとりではなく、ベテランメンバーとチームを組んで仕事を進めることになる。しかし、他のメンバーは建築や機械の専門家ばかり。電気系統の担当者は当時、受電設備の知識しか持たない柏原だけだった。

「弱電のことも、ネットワークのことも、分からないぞ…。でも、面白そうだ!」。担当するのは、これまで経験してこなかった分野の設計ばかり。不安はあったが、柏原にとっては願ってもないチャンスでもあった。

勉強してから本番…などという暇はない。 2
柏原には、とにかく時間がなかった。何しろ、入社してすぐ任された案件である。「勉強してから本番に臨む」などと悠長なことを言っている暇はない。何が何でも、納期には間に合わせなければならないのだ。中途採用で入社したとはいえ、いきなりの実務に戸惑う日々が始まった。

今回の物件は、12階建て・60戸の集合住宅。建築・機械・電気の技術者が5〜6人でチームを組み、設計コンセプトを立てていく。柏原が担当するのは、インターネットや消防設備、インターホン、防犯機器などの電気設計だ。

「まずは機器のことを知らないと、話にならないな…」。

最終的には、こちらの設計案をもとに各メーカーが機器を作ることになる。まずは設備の構造や機能について語れなければ、メーカーの担当者と話し合うこともできない。ネットワーク設備、感知機器類、誘導灯、照明…これまで何気なく見ていた機器たちが、柏原の前に大きな壁として立ちはだかった。しかし、逃げるわけにはいかない。仮に消防設備や防犯機器がうまく作動しなければ、住む人の命に関わる可能性もあるのだ。ましてや、電気関係の担当者は柏原ひとりである。知識がないことは、妥協の言い訳にはならない。

「電気」に留まらない知識を身につける。 3
「こういう構造なら、コンセントの位置はここですかね…」。

柏原が精通しなければならないのは、機器の仕組みだけではない。建築物の構造まで考慮して、設計を行なう必要がある。もちろん、建築の知識など持ち合わせていない。建築図面すら見たことがないのだ。もちろんチームには建築の専門家がいる。しかし、「生活する人が使いやすいように」 「後々メンテナンスがしやすいように」といった配慮をしながら設計していくことは、どのセクションであっても当然のことだ。そのためには、建物の仕組みや建築基準法も把握しておかなければならない。また火災報知器やガス漏れセンサー、誘導灯などの設計には、消防法も知っておく必要がある。「電気」だけではなく「不動産」全体についての深い知識が求められるのだ。

「とにかく、勉強するしかない」。柏原の毎日は、多忙を極めた。まずは参考文献やインターネットのサイトにかじりついて、足りない知識を補う。そこで調べた情報をもとに、複数の機器を何とか設計していく。時間が空けば、建築や機械のメンバー、メーカーの担当者との打ち合わせが待っている…という具合だ。夜遅くまで、パソコンの前で過ごす日々が続いた。

「トータルエンジニア」としての第一歩を踏み出す。 4
手探りの中、ひたすら突き進んで3ヶ月。分からないことだらけの日々にも、柏原はくじけなかった。「技術者は結果が全て」という使命感と、確かに知識の幅が広がっていく実感が、彼を支えていたのである。

「ここにケーブルを通すと、メンテナンスの時に柱が邪魔になりますよね」。

知識が蓄えられるにつれて、柏原はだんだんと自信をつけていった。ベテランメンバーやメーカー担当者からのアドバイス、そして自分自身の努力が、確かに実を結んでいたのである。最初はどうしても他メンバーの意見に頼ることが多かったが、この頃には自ら提案もできるようになった。

こうして柏原は、ひとつの分野に捉われない「トータルエンジニア」としての第一歩を踏み出したのである――。

エピローグ
柏原が担当した新規物件は、その後無事に着工された。完成すれば、いよいよ設計の真価が問われることになる。柏原にとっては、まだまだ気が抜けない状態だ。

「技術者として、ある分野をとことん究めるのもひとつの道です。ですが、僕にとっては様々な知識を組み合わせていく方が面白い。『不動産会社の技術者』というのは珍しい存在かもしれませんが、ここまで『何でもできる』仕事はあまりないと思います」。柏原の語り口は静かだが、表情には力がみなぎっている。多くの知識が求められる今の環境が、彼の好奇心を大いに満たしているのだ。

技術者として、さらなる高みを目指す柏原。「トータルエンジニア」への道は、まだまだ続いている。
日々、成長を続ける柏原。「前に設計したものを見ると、『今だったらもっと上手くやるのに』と思いますね」と語る。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
大学の研究で学んだのは「自己解決能力」。まず自分の頭で考え、問題解決に向けて主体的に動く姿勢が身についた。この能力は、現在も柏原の大きな強みとなっている。幅広い知識やスキルが必要となる仕事だけに、自ら学ぶ貪欲さは重要だ。より良い物件を作るためにも、主体的に提案することは欠かせない。
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