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メーカー(化学・ゴム) / 商社(専門商社(化学・石油)) / インフラ(石油)
最終更新日: 2008/02/25
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プロの仕事研究
国内最大級エチレンプラントの全面メンテナンスを成功させた、設備保全のプロ。
技術系−技術系その他
コスモエンジニアリング(株) 保全本部 丸善事業所 工務部
寺谷 昌彦 (34歳) Masahiko Teratani
入社10年目 / 芝浦工業大学 出身

プロフィール
高校時代、太陽光発電に興味を持ち、電気の世界に魅せられる。大学では工学部に進学。電気工学の専門知識を学ぶ。知識を活かしつつ、さらに広い視野を手に入れたいと丸善石油化学に入社。工務部・計電課・計装グループへの配属を経て、現在、コスモエンジニアリング株式会社に出向。計装チームから電気チームに異動する。

プロローグ
高さ40メートル、広さ74万平方メートル、年間エチレン生産量76万トン…

この巨大な怪物こそが、丸善石油化学と大手化学メーカー2社が出資して完成させた国内最大級のエチレンプラント『4EP』である。1994年に建てられた『4EP』は、誕生から10年以上にわたって丸善石油化学のエチレン精製を支えてきた。いわば、千葉工場の心臓部分といってもいいだろう。その規模と生産量は、国内最大級。消費者の目には見えづらい部分ではあるものの、パソコン、携帯、洋服、薬、化粧品などの生産には必要不可欠な存在なのである。

これら各プラントの整備・点検を行なうのが、寺谷が担当する設備保全の仕事。日々の安定安全稼動を実現するためには、4年おきの大規模な定期整備が必要となる。工事期間は、約1ヶ月半。安全第一が問われるプラント設備において、非常に重要な期間となるのだ。そして2004年10月、翌々年5月に控えた全面整備に向けて、寺谷にプロジェクト遂行の辞令がくだった。とはいえ、それまで別チームで活躍していた寺谷は、ノウハウを持ちあわせていない。こうして寺谷にとって人生最大の転機となるミッションが、ゆっくりと静かに動き始めた。

入社5年目、念願の電気チームへ異動。 1
「寺谷、そろそろ電気チームに異動してみないか?」

上司から声がかかったのは、2004年10月、入社5年目の秋だった。もともと大学で電気工学を専攻していたこともあり、電気チームへの配属を望んでいた寺谷にとっては、嬉しい辞令だった。入社してから5年間、計電グループの計装チームでユーティリティ装置の制御システム、計装機器の保全を担当。計装チームと電気チームで構成される計電グループの中核として経験を積み、そして功績を残してきた。その活躍もあって、晴れて電気チームへ異動。設備保全部門において、大卒の電気工学出身は珍しく、電気工学を学んできた寺谷はまさに若手のホープだった。

配属直後、寺谷のミッションが明らかになった。それは、2年後の2006年5月から行なわれる『4EP』の定期整備。その設備保全プロジェクトのトップとして、寺谷に白羽の矢がたったのだ。4年に1回しか行なわれない全面整備。当然、寺谷は経験がなく、それがどのようなもので、どれだけ大変なものか、想像がつかなかった。唯一理解していたのは、「とてつもないミッションであること」のみ。2006年5月の実行まで、残り1年半。寺谷の試練が始まった。

プロジェクトは、すでに1年半前から動いている。 2
規模はさることながら、『4EP』には最新技術が駆使されているとあって、その整備・点検は複雑かつ慎重に行なわれる。事前準備も、然り。まずは、現場の設備工事の流れを知ることから始まった。定期整備工事の勉強にも参加し、専門用語・機器構造を理解する。そして、工事管理能力を養う。もう過去の知識や机上の勉強だけでは業務を全うできない。とにかく体で覚えることにした。

それから、工事会社への指示書、停電・送電マニュアル、工程表、工事進捗管理表の作成も同時に行なった。『4EP』といっても、いくつもの設備・機器が結集してできているため、各設備・機器ごとの工事説明書、対象機器を明確に作成しなければならない。唯一頼れるのは、4年前の点検資料と前任担当者のアドバイスのみ。電気チームだけでなく、実際の現場で活躍する製造スタッフや工事を進める工事会社の監督者などと、何度もシミュレーションを重ね、工事計画を立案していく。経験がない分、すべてが手探りであることは事実。しかし、それを逃げ道にはしたくない。入念な準備のもと、工事会社監督者とのすり合わせも完了し、準備は完了。そして2006年5月。ついに、その日がやってきた。

完璧と思っても、事故が起こってからでは遅い。 3
「ちょっと寺谷君。これは、どういうことだね?」

定期整備工事がスタートした直後、早速寺谷は上司に呼び止められた。聞けば、モータの分解点検を行なう作業の段階で、事前打合せで点検許可をしていない電動機のメンテナンスを行なっていたのだ。通常、メンテナンスを行なう際は、関連する設備の電源をすべて落として停電させ、安全を確認したうえで行なうもの。しかし、寺谷の指示通りに工事会社の監督者は動いてくれなかった。電源が入った状態で作業を行なうことになるため、感電事故が起こってもおかしくない状況だったのだ。明らかにお互いの調整不足。「何かが起きてからでは遅い。もっと危機意識を持たなくては…」。幸いなことに大事には至らなかったものの、危険と隣り合わせとなる作業だけに、再度すべての工事着工時の確認作業を見直した。

「定期整備は、自分だけで動いているわけじゃない」。指揮を執るのは自分だが、その下には130名近いスタッフがいる。絶対に事故を起こさせないという責任感と『4EP』を担っているという使命感、さまざまな感情が入り混じる。残り1ヶ月半、何としてもこの定期整備を成功させたい。強い気持ちが寺谷を上へ押し上げた。

プロジェクト成功の先に、達成感と仲間との絆。 4
5月初旬から6月末まで続く『4EP』の大規模メンテナンス。最初の2週間が、作業のヤマだ。というのも、整備中はプラント内の電源を切るため、当然エチレンの精製がストップする。精製が止まれば、エチレンを使用して作られるパソコン、携帯、洋服、薬、化粧品などの生産ラインも止まる。つまり、工事工程が遅れれば遅れるほど、モノづくりの現場にも支障がでてしまうのだ。スケジュールにあわせて点検を進めることは思いのほか難しく、寺谷は外部との調整に奔走していた。

手には、工事進捗表が握られていた。工事が終わると機器1台ずつチェックを付け、約900台にもおよぶ設備保全の進捗を確認するのだ。一つひとつ埋まっていくごとに、感慨深くなる。工事が終盤に進むにつれ、ともにプロジェクトを見守ってきた仲間たちとの絆も強くなっていった。彼らの協力なくして、これだけ大きな仕事は完遂できなかった。先輩の教えなくして、一人でここまで辿りつけなかった。工事進捗表に最後のチェックを入れ、定期整備工事の完遂を確認すると、安堵と達成感が寺谷たちを包みこんだ。

見上げればそこには、高さ40メートルの怪物。以前よりも、少し小さく見えた。

エピローグ
「今後の目標は2010年にある『4EP』の設備保全と2008年5月にある別のプラント整備、それから、後継者の育成ですね」と寺谷。その目はすでに未来へ向けられている。平均勤続年数21年を誇る丸善石油化学にとって、“第二の寺谷”の出現が大きな望みでもある。

『プラントが一つたてば、60年は使われる』という言葉が示すよう、プラント設備にはメンテナンスがつき物。それだけ設備保全が担う役割は大きく、今後もその希少価値はさらに高まっていく。「前例がないなら作っていきたい。手を挙げれば任せてくれる会社だからこそ、もっともっとチャレンジしたい」。そう語る寺谷にとって、今回のプロジェクトはあくまで通過点のようだ。

寺谷の後ろにそびえ立つのが、エチレンプラント『4EP』。今後は、「技術伝承」と「社内教育」にも注力していきたいと話す。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
学生時代、奨学制度を利用して夜間大学に通っていた寺谷。親からの仕送りを一切受けず、働きながら大学に通って生計を立てていた。早朝と夕方に仕事、夜は勉強というハードな5年間を過ごし、肉体的にも精神的に辛い日々が続いた。しかしその結果、少々のことではくじけない“粘り強さ”と“前向きさ”が身についた。
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