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最終更新日: 2008/03/31
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プロの仕事研究
1mmが生み出す粘着性を追求し、携帯電話のリリースを支えた商社営業のプロ。
営業・販売系−営業(法人・ルートセールスが中心)
東京営業所
坂元 崇彦 (29歳) Takahiko Sakamoto
入社7年目 / 中央学院大学 法学部 法学科 出身

プロフィール
営業職を希望して就職活動を展開する中で、千代田電資と出会う。商社としてさまざまな材料を扱い、それらを組み合わせることで多岐にわたる製品を生み出していける、という点に魅力を感じて入社を決意。入社後は主に既存顧客へのルートセールスに従事。顧客との深い信頼関係を築き上げながら、成長する毎日を送っている。

プロローグ
数メートルの高さから落下する携帯電話に、技術者たちは釘付けになっていた。そこでは新しい携帯電話を開発する際の“落下試験”が行なわれていた。正面から、右から、左から…。落下を繰り返す携帯電話は、合計6回、全てを丸裸にされるかのように角度を変えてその耐衝撃性を試された。「これは少しまずいな…」。技術者の一人が、試験結果を見てそうつぶやいた。「フロントパネル(液晶)がまずい」。

数日前――。坂元崇彦は肩を落としながら車を走らせていた。「他社に頼んでしまったのか…」。長年取引のあった、今回のクライアント。「残念だけど、今回は別のメーカーさんにお願いしようと思う」。そんな断りの言葉が、坂元の頭の中では繰り返されていた。しかし、その数日後。

「この前断った“フロントパネルの『固定材』”の件だけど、少々状況が変わってきてね…」。後日、改めて定期訪問に訪れた坂元を待っていたのは意外な展開だった。「落下試験の結果、どうもフロントパネルの“粘着性”がまずいらしい」。クライアントの口から出たその言葉に、坂元は即座に反応を示した。「もう一度提案させて頂けませんか?!」。それは、坂元の闘いが再び幕を開けた瞬間だった。

再び訪れた提案のチャンス――しかし、その表情には焦りが。 1
2003年、4月。携帯電話を取り巻く環境は、まさに大きな進化を遂げつつあった。第3世代通信によるハード面の充実はもとより、デザインやサイズなどのフォルムそのものにも急激な変化が生まれていた。フロントパネルについても同じことが言え、携帯電話の本体がダウンサイズを繰り返す一方で、液晶はそのサイズを大型化していく。相反するこの進化は、実は携帯電話の製造工程において大きな“難題”を生み出していた。

フロントパネルを携帯電話の本体に固定するためには、『固定材』が用いられる。いわゆる両面テープを窓枠のように、細く、四角く加工し、その幅はわずか1mm、場合によっては0.4〜0.5mmになるものもあった。そんな極細の両面テープが、フロントパネルと本体を固定する機能を果たすのだ。それが坂元の提案しようとしていた固定材だった。当然、両面テープの幅が小さくなれば、接触面積が減ることによって粘着性が弱まってしまう。小さなサイズの携帯電話に大きな液晶を搭載しようとすれば、より細い幅で、強い粘着性を持つ固定材が求められるのだ。

「何とかサンプルを出さないと…!」。坂元は再びの提案に向けて新たな固定材の選定に奔走していたが、その表情からは明らかに焦りがにじみ出ていた。

条件は、“今日中”にサンプルを提供すること。 2
「新たな材料を提案してくれるのは良いが、どうしても“今日中”にサンプルを提出して欲しい」。それが、クライアントの提示した条件だった。その話を聞いたのは、何と夕方のこと。新たな提案に向けてスタートを切った瞬間、タイムリミットが目前まで押し迫っているという状況だった。「それでも、何とかお客様の要望に応えたい――」。その気持ちが、坂元を動かしていた。

通常、新製品として携帯電話が開発される際には、固定材などの材料の選定には約3ヶ月の期間を要する。今回、その期間が残り1ヶ月を切ろうかという落下試験の段階において、フロントパネルの粘着性に問題が浮上してきたのだ。つまり開発期間が終了する直前の出来事で、クライアント側にとっても残された時間は少なかった。「もし自分が良い材料を提案できなければ、ひょっとしたら製品もリリースされないかもしれない…」。そんなプレッシャーを感じつつも、迅速かつ最良の提案を行なうべく材料の選定に取り掛かっていく坂元の姿があった。

ポイントは、1mmの幅が生み出す粘着性。 3
“良いサンプルを”という漠然としたニーズを、どこまで具体化できるか。ニーズを本質的な部分まで掘り起こし、そこに付加価値を与えて提案することが最も大切だと坂元は感じていた。粘着性、加工性…あらゆる角度から今回の提案に最も相応しい固定材を割り出していった。「やはり粘着性がポイントだな…」。坂元の頭の中で材料選定の“軸”として浮かんできたのが、落下試験でもネックとなっていた粘着性についてだった。

「フロントパネルと固定材には相性がある」。フロントパネルの表面にシリコン処理が施してあると、一般的な固定材では粘着性が弱まってしまう。アクリルの粘着剤が多く用いられているため、シリコンとの相性が悪いのだ。「何か無いか…」。刻一刻とタイムリミットは近付いてくる。「何か、何か良いものはないだろうか…!」。いよいよ焦りがピークに達しようとした、その時だった。「そういえば、仕入先メーカーの営業担当が言っていた…」。“アクリルではない”特殊な粘着剤を用いた固定材の開発に成功した――それは、色々な所に足を運んで情報収集に徹してきた坂元だからこそ得ることができた、珠玉の情報だった。「これだ…!」。坂元はすぐさまその仕入先メーカーに問い合わせた。「今日中にサンプルを出せば、評価(製品試験)してもらえるんです!」。そして――。

怒涛の1日がもたらした、大き過ぎる達成感。 4
「こんなに早い対応、ありがとうございます。後は、評価にかけてみます」。素早い対応の結果、何とかサンプルを提出することができた。後は評価で良い結果を残すのみ。評価には2週間を必要とし、落下試験はもちろん耐水試験や耐熱試験などさまざまな試験が実施された。坂元は祈るような気持ちでその2週間を過ごしていた。

そうしてついに迎えた、結果発表の時。「いかがだったでしょうか?」。おそるおそる、そう切り出す坂元。少しの沈黙を置き、クライアントはゆっくりとその口を開いた。「何も問題ありませんでした。坂元さんが紹介してくれた材料で行かせてもらいます!」。それは、受注が決定した瞬間だった。一度は断られた案件。それを再び受注に結びつけた坂元の表情には、達成感が満ち溢れていた。

それから3ヶ月が経過する頃、今回の携帯電話が量産化されて市場に向けてリリースされていった。街を歩きながらふと何かに気付き、視線を止める坂元。「色々あったよなぁ…」。遠い昔のことのように坂元が視線を送るその先には、自らが材料の選定に奔走した携帯電話が誇らしげに輝いていた。

エピローグ
「携帯電話の進化に伴い、固定材に求められる技術も高くなっている。しかしそこで自分たちが要望に応える材料を調達・提供しなければ、製品の完成には結びつかない」。千代田電資の取り扱い材料はゆうに1万点を超える。今回坂元が提案したような固定材だけではなく、扱う材料一つひとつにおいてそういった心掛けが欠かせない。「たとえ“無理難題”のオーダーであっても、しっかりと受け止めて期待以上の材料を提供するのが自分たち営業の仕事」。

「今後は“自分から提案していく営業”を実践したい。そのためにはさまざまな所に足を運び、常に最新の情報を収集していく姿勢が必要」。千代田電資の将来を担いながら、坂元の疾走は今日も止まらない。
「情報、人脈、信頼。それらを築き上げていくためにも、色々な人との“つながり”を最も大切にしている」。そう語る坂元。

〜仕事で活かした学生時代の経験〜
「一度断られようとも、決してあきらめずにトライし続けること」。そんな坂元のスピリットのルーツは、ずっと汗を流し続けてきた『野球』にある。日々の厳しい練習を通じて、“強靭な精神力”を身に付ける事ができたのである。
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