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そんな市川君の就職活動は、無事に終わるはずだった。大学の専攻を生かせる仕事をしたい、という彼の考えにぴったりのN社から4月に内定をもらっていたのだ。しかし、その内定は、思わぬことから“辞退”という結末を迎える。
6月、久しぶりにサークルの集まりに行くと、話題は就職活動のことに。そこへ、後輩の女の子達が就職活動の話を聞きにやってきた。
「先輩たちは、どこに内定したんですかぁ?」
「キャー!宮下さんって、あのCトラベル社なの? ハワイ、連れてって♪」
「村上さんは、D広告社なんだ!絶対芸能人紹介してね!!」
『やっべーな、みんなチヤホヤされてる…』
後輩に囲まれる友達がうらやましくなっていた市川君にも話が振られた。
「で、市川さんはどこなの??」
「お、おれはあの有名な外資系の…、A経営コンサルティング社だぜ。いやー、ア、アメリカで、マ、マーケティングと経営戦略を、き、企画するっていうのかな。まだ最終面接だけど。はは…!」
「意外とカッコいいのね!見直しちゃった。」
つい大嘘をついてしまった市川君。
「ちょっと用事があるから…」
とすぐ家に帰り、A社のホームページをチェック。
『おおっ、まだ採用やってた…。すぐにエントリーしよう!』
寝る間も惜しんで対策を始めたのだった。
一週間後、内定をもらっていたN社から電話がかかっててきた。内定承諾書の到着締切日をとっくに過ぎていたが、A社のことに気をとられ、すっかり忘れていたのだ。
「まだ、承諾書が届いていないのですが、どうかされましたか?」
みんなの手前、もう引き下がることはできなくなっていた市川君。
「大変残念ではありますが、御社を辞退させていただきます…」
と、弱々しい口調で伝えたのであった。
『これでよかったんだよな。僕の就職活動…。』
彼が来年勤める企業がどこになるのか、まだ誰にも分からない。 |
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